一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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ブロッコリースプラウトの発芽について

質問者:   小学生   yu_great
登録番号5423   登録日:2022-08-09
自由研究で、色々な液体でブロッコリースプラウトの発芽について調べようと7日間観察しました。

混ぜているものは50mlの水に5g入れて混ぜました。

・水
・米のとぎ汁
・水と油を混ぜたもの

・固形石鹸(石鹸素地・乳酸Na・カキタンニン・チャ葉エキス・硫酸(AI/K)・カオリン・BG・エタノール・水)

・食器洗い洗剤(6%アルキルスルホン酸ナトリウム・水軟化剤(クエン酸)・安定化剤・PH調整剤・酵素)

・粉末酸素系漂白剤(過炭酸ナトリウム(酸素系)(第一類:第二種酸化性個体)・アルカリ剤(炭酸系)・界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)/液性:弱アルカリ性)

・歯磨き粉(水、グリセリン、セルロースガム、ミネラル塩、キシリトール、メントール、海塩、ヒドロキシアパタイト、乳酸桿菌/ダイコン根発酵液、炭酸水素Na、グリチルリチン酸2K、(クロロフィリン/銅)複合体、セイヨウハッカ油)、で行いました。

水、米のとぎ汁、固形石鹸は発芽して成長し、水と油は油がない部分は発芽して成長しました。(油が邪魔をして水を吸えなかったので、成長しなかったと思っています。)

酸素系漂白剤、歯磨き粉、食器洗い洗剤、重曹は発芽せずに終わりました。

酸素系漂白剤と食器洗い洗剤は、界面活性剤が細胞膜に影響を与えたからだ(殺菌力が強く、タンパク質を変質させてしまう性質があるため)と見たのですが、その理由で発芽しなかったのでしょうか?

重曹は種が真っ黒になって、発芽せずに終わってしまったのですがなぜでしょうか?(検索しても回答が出てこず理由がわかりませんでした。)

歯磨き粉には界面活性剤が入っていなかったのですが、どの成分の影響で発芽しなかったのでしょうか?
yu_greatさん

質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。 yu_greatさんがこの実験を思いついたのは学校で種子の発芽の事を習ったからでしょうか。「ブロッコリースプラウトの発芽」というのはちょっと変な感じがします。スプラウトいうのは新芽のことです。この場合ブロッコリの種子が発芽して少し大きくなった芽生えのことです。マーケットに売っている芽生えです。だから正しくは「ブロッコリの種子の発芽」だと思いますので、そのつもりで考えましょう。
小学校四年生だという事ですので、難しい言葉はできるだけさけるようにしますが、もし分からない言葉があったら、ご両親にきいてください。

まず、yu-great さんが行った実験の仕方と結果を読むと分からないことが沢山あります。
1.ブロッコリーの種子は市販のものだと思いますが、品種がいくつかありますので、どれを使ったのか。試験した材料の内容(組成:ソセイ)は書いてあるのですから、これも書いたほうがいいでしょう。
2.種子を何個ずつどんな入れ物に入れ、どのような所(明/暗など)に置いて、どのように観察したのか。
3.発芽したかしないかの判定はどの様にしたのか。かりに20個の種子のうち1〜2個しか発芽しなくても発芽としたのか。7日間の観察の間に早い発芽と遅い発芽の場合がありませんでしたか。
4.どうしていろいろな液体として、こういうものを選んだのか。
5.50miの水に5gの試験したい材料を加えるということは、もし完全に溶ければ約10%というとても濃い液体になりますが、なぜその割合を選んだのか。
6.水に完全に溶けない、あるいは溶けにくい材料、特に油はどのようにして混ぜたのか。また、油はなに油を使いましたか。

ということで、正直なところ正しい回答をすることは無理です。yu_greatさんは種子の発芽の実験をするにあたって、種子の発芽の基礎的なことについて調べてみましたか。
種子の発芽がどのように行われるかということは本コーナーの過去の質問、登録番号2109を読んで下さい。簡単にまとめると、種子の中には次世代の植物となる「胚(ハイ)」(植物体の赤ん坊です)が眠っていて、その胚が眠りから覚め、種皮を破って生長を始めるのが発芽です。種子は乾燥しているので、胚が目覚めるためにはまず水分の供給が必要です(吸水)。種子が十分に水を吸うと種子を構成している細胞が元気になっていろいろな活動を開始します。この活動は化学反応です。まずは貯蔵されている物質(デンプンや脂肪やタンパク質)が分解されて、糖や脂肪酸やアミノ酸といった小さい分子の物質に変えられます。胚はこれらの分子を使って生命活動に必要なエネルギーを得て、またそれらの物質を材料にして細胞の増殖など新しい体を作り上げていくのです。
ですから、発芽が起こらないということは、1.胚が死んでいる。2.吸水が起きない。3.細胞の中の化学反応が正常に進まない。のどれかが原因になります。なお、種子の吸水は胚の生死に関係なく起きる現象です。

そこで、yu_greatさんの実験的結果でなにが問題かを考えてみましょう。
まず、発芽が見られた水と米のとぎ汁は問題はありませんね。ただ、とぎ汁はどのくらい濃いものであったかわかりませんが、容器の底に沈殿ができていたのではないですか。お米のとぎ汁は精米の時に残った「ぬか」が洗い出されたものです。多くのミネラル成分やビタミン類も含まれていますが、大部分は炭水化物です。他にタンパク質や油もあります。今のお米は精米がよくされていますので、昔のお米ほど沢山のぬかは残っていないはずです。何れにしてもこれらの成分は発芽の邪魔をするものではありません。ただ、ある意味で栄養に富んでいるので、温度が高いとバクテリアやカビが繁殖して、発芽した後の生長が障害を受ける事もあるでしょう。
次に油ですが、油は水に溶けません。水の上に浮くはずです。油の部分は発芽しなかった様に書いてありますが、油と水を混ぜた液体の中でどの様に種子が浸かっていたのですか。ともかく、油は水分を供給しませんので、発芽できないのは当然です。
固形石鹸5gを50mlの水に溶かすのは簡単ではないでしょう。私も実際に比較的柔らかい固形石鹸を5g測って50mlの水で解けるかどうかやって見ました、ヘラですりつぶしたりしてやって見ましたが、泡立ちも多くてすごく時間がかかりました。yu_greatさんはどうやって溶かしたのですか。それともただ混ぜただけですか。固形石鹸は弱いアルカリ性です。種子は一般にアルカリ性だと発芽しにくいので、もしこの様に濃い石鹸液に種子を入れたら、素直に発芽できるかどうか疑問です。今すぐ自分で試して見られないのでなんとも言えませんが、せっかく濃い石鹸水を作ったので、ブロッコリの種子を入手して試験して見ましょう。石鹸をまぜただけだとすると、水の石鹸の濃度は高くないので、発芽できたのだと思います。
酸素系漂白剤、歯磨き粉、食器洗い洗剤で発芽が見られなかったのは、これらの製品に含まれるどれかの成分が発芽の3の段階の邪魔をしたのでしょう。これらの製品に含まれるそれぞれの成分の割合はどうなってるいるのか、また、それぞれの成分はどれも同じ程度に溶けやすい(溶解度と言います)とは限りません。水の量と成分の量との関係(割合、%)によって異なります。また、温度によっても異なります。歯磨き粉は粉末ですか。多分練り物ですね。これも完全に溶けましたか。この様な様々な物が混じった液体(?)の場合は何が原因かを決めつけることは容易ではありません。例えば、鳥肉、あぶらげ、きのこ、人参、ごぼう、を使った炊き込みご飯を食べて中毒症状を起こした時、どれが原因であるかは調味料やお米自体も含めて1つ1つ調べて見ないと分からないのと同じで、酸素系漂白剤、歯磨き粉、食器洗い洗剤の場合も、その成分をそれぞれに単独で発芽試験をしてみるのが一番はっきりする方法でしょうね。
界面活性剤はよほどの濃い濃度でなければ発芽に影響はないないと思います。植物では植物ホルモン、植物成長調節薬、栄養分などを葉の表面からなど体の中に入りやすい様に界面活性剤を使います。どんな物質でも量が多い(濃度が高すぎる)とかえって害になります。
重曹の10%濃度はアルカリ性なので、前述の様に発芽には適した条件ではありません。最初の吸水がうまく行かないのでしょう。

以上の様に、この実験からは「こういう液体では発芽しなかった。」というだけのの事は言えますが、それがなぜかをいう事はできません。
勝見 允行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2022-08-11