一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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離層を形成する細胞は葉柄ができる時から決まっているのですか?

質問者:   一般   fumi
登録番号5461   登録日:2022-09-08
落葉や枯凋性に興味を持っています。

落葉するメカニズムは一部例外を除いてほとんどの場合、葉柄基部に離層ができて、葉が葉柄ごと脱離しますが、Q&Aの登録番号0848の回答に「離層は器官脱離(落葉、落果など)のために必要な特別に分化した細胞群からできていて、・・・」とあり、葉柄ができる段階から、葉柄基部にある、特定の細胞群が離層になるように決まっていると考えてよろしいでしょうか?

よろしくお願いいたします。
fumiさん

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
器官脱離はある器官が母体から切り離される現象の表現です。離層は器官が脱離するときに脱離部分に形成される特種な細胞群を指しています。離層細胞間の接着力が弱まり細胞が分離(Cell Separation)することで器官がはずれます。離層細胞の細胞壁が崩壊する場合もあります。自然状態では器官脱離(接着していた細胞の分離)は遺伝的に決まった場所でおきます。落葉や落果がその例ですが、母体が異常な状態におかれると、早期に離層が形成されますが、元来形成されない場所に離層が形成される(不定離層)こともあります。ご質問にある「葉柄ができる段階から」の時期がはっきりしませんが、葉柄の伸長と葉身の展開が終わった時期(極めて若い葉の時期)には解剖学的に認識される離層細胞は無いのがふつうです。葉の展開や果実の成立から落葉、落果までにはかなりの時間がありますが、脱離がおこる前のある時期には離層細胞(細胞壁のうすい小さな丸い細胞)が周辺から内部方向へ向けて分化してきます。その細胞数は種によって決まっているようで、数層から数十層になることが観察されています。形態学的に認識できる離層細胞分化が始まっても直ちに器官脱離がおこるわけではありません。離層でのCell Separationに特異的に働くペクチナーゼやセルラーゼの遺伝子の発現を可視化して調べると離層細胞分化が始まるかなり前から予定部位に発現が始まり、離層形成、脱離に至るまで発現が増加することが知られています。
結局、形態形成とおなじで、時間的、空間的に一定の遺伝子群が働き出したり機能を止めたりして特定の部位に離層細胞分化を促し、離層細胞の生化学反応を制御して器官脱離に至ると理解すべきものと思います。
「離層形成」と言う一過程をとっても、これから先、まだまだ解決しなければならない課題がたくさんあります。

今関 英雅(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2022-09-09
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