一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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寿命と現存量の関係について

質問者:   教員   もりー
登録番号5472   登録日:2022-09-21
「外洋域の生産者である植物プランクトンは平均寿命が短いため、現存量は小さい」という解説を見かけますが、平均寿命が短いため体が大きくならず、有機物を溜め込むことができない、と捉えればよろしいでしょうか?
死んだ分のプランクトンが新しく生まれてくるのであれば現存量は小さくならないのではないか、という質問を生徒から受けたことが、この質問のきっかけとなっております。
ご回答よろしくお願いします。
もりー様

この質問コーナーをご利用いただきありがとうございます。

一般論として確立していることは、太平洋や大西洋のかなりの領域(「外洋域」)では、各地の「沿岸域」の場合に比べて、海水一定体積当たりのプランクトン(植物・原生生物・細菌・動物などの総和)の存在量が小さいという事実です(ただし、赤道海域のように海水の湧昇が起きている場所では逆に高い基礎生産量が確認されています)。外洋域と沿岸域の間でプランクトンの現存量に差を生んでいる主な原因は、第一次生産者としての植物プランクトンの存在量の差であり、更にその原因としては植物プランクトンの生育に不可欠な窒素やリンなどの栄養塩の濃度が外洋域では沿岸域に比べて低いことが挙げられています(ただし、NaClを中心とする塩濃度全体は、河川水が流入する沿岸域よりも外洋域の方が高い)。外洋域と沿岸域の間では当然生息する植物プランクトンの種類に差があると思われますが、両域における植物プランクトン種の平均寿命に差があることを示す報告を見付けることはできませんでした。「現存量」は「増殖速度」と「寿命(被捕食速度も関係)」の差から導かれることになりますので、両海域でのそれぞれの値についての確実なデータを探し当ててから検討して見てください。
佐藤 公行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2022-09-25