一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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花柄・花茎について

質問者:   会社員   彷徨い人
登録番号5474   登録日:2022-09-22
ナンバンギセルが綺麗に咲くシーズンとなりました。この花の茎に見えるようなところは図鑑では花柄と記載されています。
そういえばスミレには有茎、無茎とあり、無茎はやはり花柄だったのを思い出しました。無茎のものは有茎のものと違い、花柄から葉がでたり分岐したりしないという点で納得しました。
ところが、タンポポの同じ部位は花柄ではなく、花茎とされています。タンポポの花茎も、葉や分岐はありません。
そうなると花柄と花茎との分け方がわからなくなりました。もしかしたら、タンポポは花が1つでない(頭状花序)などが関わっているのでしょうか。よろしくお願いします。
彷徨い人様

 こんにちは。日本植物生理学会の植物Q&Aコーナーに寄せられたあなたのご質問「花柄・花茎について」にお答えします。

 花柄と花茎の識別についてのご質問です。私なりに理解しているところですぐにお答えする積りでしたが、少々気になるところがあったので、いろいろ調べてみましたところ、言葉で明確に定義するには私の理解は曖昧であったことに気がつきました。そこで、東京大学の塚谷裕一先生のご意見を頂きました。塚谷先生のお考えは概ね次の通りです。
 花序全体を貫く茎が花茎であり、そこで個々の花を担っているのが花柄というものです。ナンバンギセルは外から見ると単一の花が地下から伸びているかのように見えますが、あれは地下に短い花茎があり、そこから長い柄で一つひとつの花が出ているので、花柄ということになります。スミレの無茎、有茎は、花茎が伸びるかどうかで、いずれの場合も花柄が花に続いています。タンポポは頭状花序であって単一の花ではない(そして一個一個の花には柄がない)ので、やはり花茎になります。
 私が最も信頼をおいている生物学辞典では、花柄は枝の一種で、特に花序を構成する側枝、花茎は花あるいは花序を形成する苗条と記述されています。言葉は若干異なりますが、塚谷先生のご意見と同じで、植物学的にはこれが適切なものと思われます。
 いろいろな資料での説明を見ていると、花柄については一つ一つの花を支える枝として概ね一致していますが、花茎については様々です。地中または地表面付近から出て立ち上がるものを花茎としているものが多いようです。しばしばチューリップがその例としてあげられています。普通葉(ふつうよう)をつけずに単一または複数の花をつける茎という解説もあります。いずれも前述の説明を補完するものと思います。しかし、スミレ属については花茎と見なす資料も見られます。植物の形態は種によって多様で、花がつく部位やつき方も一様ではなく、どの部位を花茎と見なすかは簡単ではないようです。
竹能 清俊(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2022-10-05
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