質問者:
自営業
野うさぎ
登録番号5482
登録日:2022-10-03
新潟県中魚沼郡津南町の山中に住んでいます。近くのドロノキだけが夏と秋の2回、毎年落葉します。同じ町内でも他の樹は秋のみです。こんな樹ってあるのでしょうか。ご教示お願いいたします。
みんなのひろば
夏と秋の2回落葉するドロノキ
野うさぎ さん
みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
ドロノキ、ドロヤナギともいいますね、ヤマナラシとともに日本原産のヤナギ科、ポプラ属(Populus属)の仲間ですが、現在ポプラ並木などに使用されている「外観のよいポプラ」はほとんど外来種です。
ドロノキは水辺などの湿地性の土地を好み、典型的な陽樹で春先には冬芽が成長をはじめると葉は盛んな光合成を行う成長の早い樹木です。その結果、材は柔らかく、かつてマッチの軸や経木(キョウギ)に使用されたようですが、現在はあまり利用されていないようです。腋芽の展開が継続して春先に展開した葉を覆うようになります。すると早く展開した葉の光合成が妨げられ夏頃にはそれらの落葉が始まります。後から展開した葉は秋になると光量と温度の低下が光合成能の低下をもたらして2回目の落葉がおこることになります。
常緑樹、落葉樹とは個体単位でみて緑葉が常についている樹種か葉が一斉に落ちるので葉のない時期があるかの違いだけで、個々の葉の寿命が1年より長いが決まっていなければ常緑樹に見えるものです。ですから常緑樹の葉はかなり資源を投入して頑丈につくられている一方、落葉樹の葉は光合成能がそれなりにあるが比較的安上がりに出来ていますね。ドロノキの場合は葉の光合成能が強いこと、その結果成長が早いことが重なって落葉のタイミングが2期になった結果とみられます。
なお関連する質問がこの植物Q&Aの登録番号2520にもありますのでご参照下さい。
【追加質問】
よく見てみましたら陽当たりの良いドロノキは年に2回落葉しています。普通のところのものは1回であることが分かりました。新潟県津南町の標高400mくらいの林のドロノキはもうすでに落葉が始まり葉がほとんどありません。陽当たりの良い清水川原の樹の方はまだ落葉が始まっていません。ご教示いただきましてお礼申し上げます。
登録番号2520拝見しました。再度、質問させてください、よろしくお願いいたします。光合成能が強い事と成長が早い事の2つの条件が重なれば、他の樹種でも起こりうるのでしょうか。
野うさぎ
【追加補足】
陽樹は光合成活性の光量依存度が高いものです。もちろんその依存度や光合成能には幅がありますが、光量低下による光合成活性の低下が大きければ(またその逆、光量の増加が光合成生産を大きく高める)陽樹としての性質が強いことになります。ドロノキはこの陽樹性が強いので、初期の葉(十分な光量を受けている)は盛んに光合成生産を行い個体は成長し続けますが、他の葉の陰になって光量が低下すれば初期葉自体が老化域に入り落葉へと向かいます。後から発達した葉は光を十分に受けますから光合成生産を継続し、秋になって光量低下と低温が主要因となって老化、落葉に至ると解釈されます。
言い換えれば、環境の影響を大きく受ける結果ですから、すべての個体に同じことが起きるとは限りません。また、葉が形成される密度(他の葉の被陰度に影響します)も必要な要因と考えられます。「全く同じ(と思う)環境」においたとしても、個体内の微気象、微環境は違うことになるため個体、樹種が違えば違った生態応答を示すことになるでしょう。紅葉や黄葉、落葉などの現象は個体全体が同調的におこることはほとんどありません。
みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
ドロノキ、ドロヤナギともいいますね、ヤマナラシとともに日本原産のヤナギ科、ポプラ属(Populus属)の仲間ですが、現在ポプラ並木などに使用されている「外観のよいポプラ」はほとんど外来種です。
ドロノキは水辺などの湿地性の土地を好み、典型的な陽樹で春先には冬芽が成長をはじめると葉は盛んな光合成を行う成長の早い樹木です。その結果、材は柔らかく、かつてマッチの軸や経木(キョウギ)に使用されたようですが、現在はあまり利用されていないようです。腋芽の展開が継続して春先に展開した葉を覆うようになります。すると早く展開した葉の光合成が妨げられ夏頃にはそれらの落葉が始まります。後から展開した葉は秋になると光量と温度の低下が光合成能の低下をもたらして2回目の落葉がおこることになります。
常緑樹、落葉樹とは個体単位でみて緑葉が常についている樹種か葉が一斉に落ちるので葉のない時期があるかの違いだけで、個々の葉の寿命が1年より長いが決まっていなければ常緑樹に見えるものです。ですから常緑樹の葉はかなり資源を投入して頑丈につくられている一方、落葉樹の葉は光合成能がそれなりにあるが比較的安上がりに出来ていますね。ドロノキの場合は葉の光合成能が強いこと、その結果成長が早いことが重なって落葉のタイミングが2期になった結果とみられます。
なお関連する質問がこの植物Q&Aの登録番号2520にもありますのでご参照下さい。
【追加質問】
よく見てみましたら陽当たりの良いドロノキは年に2回落葉しています。普通のところのものは1回であることが分かりました。新潟県津南町の標高400mくらいの林のドロノキはもうすでに落葉が始まり葉がほとんどありません。陽当たりの良い清水川原の樹の方はまだ落葉が始まっていません。ご教示いただきましてお礼申し上げます。
登録番号2520拝見しました。再度、質問させてください、よろしくお願いいたします。光合成能が強い事と成長が早い事の2つの条件が重なれば、他の樹種でも起こりうるのでしょうか。
野うさぎ
【追加補足】
陽樹は光合成活性の光量依存度が高いものです。もちろんその依存度や光合成能には幅がありますが、光量低下による光合成活性の低下が大きければ(またその逆、光量の増加が光合成生産を大きく高める)陽樹としての性質が強いことになります。ドロノキはこの陽樹性が強いので、初期の葉(十分な光量を受けている)は盛んに光合成生産を行い個体は成長し続けますが、他の葉の陰になって光量が低下すれば初期葉自体が老化域に入り落葉へと向かいます。後から発達した葉は光を十分に受けますから光合成生産を継続し、秋になって光量低下と低温が主要因となって老化、落葉に至ると解釈されます。
言い換えれば、環境の影響を大きく受ける結果ですから、すべての個体に同じことが起きるとは限りません。また、葉が形成される密度(他の葉の被陰度に影響します)も必要な要因と考えられます。「全く同じ(と思う)環境」においたとしても、個体内の微気象、微環境は違うことになるため個体、樹種が違えば違った生態応答を示すことになるでしょう。紅葉や黄葉、落葉などの現象は個体全体が同調的におこることはほとんどありません。
今関 英雅(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2022-10-05