一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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彼岸花の開花時期の推移

質問者:   その他   野の人
登録番号5483   登録日:2022-10-05
 彼岸花は香川県では九月のお彼岸の頃に開花します。登録番号1082から彼岸花の開花が20℃付近の気温で促進されることを知りました。地球の温暖化で実は開花時期が昔より遅くなってるのでしょうか?また、今後更に遅くなるのでしょうか?
野の人 様

質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。登録番号1082を読まれておられるので、植物の花芽形成と開花の時期が光や温度の影響を受けることは理解くださっていることと思います。
したがって、サクラの開花のように、同じ植物でもどの地域に生育しているかで開花の時期は異なります。それは、今年は暑い年だとか涼しい年だとか言うように、平均気温の高低によって開花の時期が早まったり、遅くなったりするからです。
ヒガンバナの花芽の形成とその発達はその時期の地温の範囲が10~30℃であれば可能ですが、適温は20℃位とされており、それより低いか高いと花芽の形成と発達は遅くなり、結果的に開花も遅くなることが多いです。
気象庁は生物季節観測を63種類の生物について続けていますが、その内34種が植物で、開花日の観測は28種あります。その中にヒガンバナについての観測が含まれ、全国南から北まで17の地方気象台で観測されています。2013年から2020年までのデータをWEB上で閲覧することが出来ますのでご覧になってみて下さい(気象庁生物季節観測データベースで検索)。それを眺めると、開花日がだんだんと遅くなっているように思われます。
この変化はおそらくおっしゃるように地球温暖化が影響しているのでしょう。今年英国の『Proceedings of the Royal Society B:Biological Sciences (英国王立協会紀要B:生物学)に、国内の樹木、薬草、蔓性植物406種、40万件以上について1987年から2019年に測定された開花日が1753年から1986年の開花日に比べて30日も早くなっているという論文が掲載された。これは地球温暖化の傾向に一致していると結論しています。ヒガンバナの場合は温暖化は開花日を遅らせるので逆ですが、植物の一生(生活環/史)はこれまで最適だった環境が変化すると顕著な影響を受ける事になります。今後日本でも毎年温暖化の傾向が続けば、ヒガンバナの開花の時期も一般的に遅くなっていくことが予想されますね。
勝見 允行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2022-10-07
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