一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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道管形成の仕組み

質問者:   教員   もりもってぃ
登録番号5496   登録日:2022-10-20
道管は水を押し上げる圧力に耐えられるようリグニンが沈着した死細胞でできている、という内容を高校生に教えたところ、2つの疑問が生じました。

「リグニンは細胞の外側に作られるのか、内側に作られるのか。内側に作られるならば、水の通り道は徐々に狭くなるのか。」
「背の高い樹木では、より高い圧力に耐えられるように、リグニンは分厚くなっているのか。また、より多くの水が必要になるので道管は太くなっているのか。」

2つ目について、死細胞でできている道管が成長に応じて太くなるのか、という疑問もあります。道管の本数が増えるのでしょうか。

回答していただけると幸いです。
よろしくお願いいたします。
もりもってぃ 様

ご質問、有り難うございました。道管の生理学に精通されています京都先端科学大学バイオサイエンス学科学部長・教授の福田裕穂先生から、下記の回答が寄せられました。

【福田先生の回答】
「リグニンは細胞の外側に作られるのか、内側に作られるのか。内側に作られるならば、水の通り道は徐々に狭くなるのか。」

新しい細胞壁は細胞壁の内側に作られます。なぜ、どんどん狭くならないのかは、外側の細胞壁が少しずつ分解されているからです。生きている細胞の細胞壁は内側で作りつつ、外側で分解して一定の大きさを保っているのです。細胞壁には一次細胞壁と二次細胞壁があり、リグニンは二次細胞壁に沈着します。道管の二次細胞壁もまだ道管細胞が生きているうちに作られ、リグニンもその過程で沈着します。

「背の高い樹木では、より高い圧力に耐えられるように、リグニンは分厚くなっているのか。また、より多くの水が必要になるので道管は太くなっているのか。」2つ目について、死細胞でできている道管が成長に応じて太くなるのか、という疑問もあります。道管の本数が増えるのでしょうか。

高い樹木においてもリグニンを沈着した道管・仮道管の二次細胞壁が厚くなることはないと考えられます。年輪を見てわかるように、木が太くなる時にはリング状に肥大します。これは道管を作り出す前形成層細胞がリング状になっていて、それが分裂してたくさんの道管の前駆細胞を作るからです。この道管前駆細胞が成熟して道管を作っていくために、道管の数が増えます。死んだ道管細胞は数を増やしませんし、太くもなりません。
福田 裕穂(京都先端科学大学)
JSPPサイエンスアドバイザー
山谷 知行
回答日:2022-10-21
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