一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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細胞内発酵のぶどうの生死

質問者:   一般   nutshide
登録番号5499   登録日:2022-10-24
ワインの専門資格を勉強していてます。醸造手法の一つであるカルボニックマセラシオンでは、収穫したブドウの房をそのまま密閉されたタンクに詰め込んで二酸化炭素を注入すると、無酸素状態で細胞内発酵が起きるとあります。その目的は発酵によってエネルギーを得ることだと思うのですが、この時点でブドウはまだ生きているのでしょうか?またその後どのタイミングで何が起きてブドウは死滅するのでしょうか?
nutshide様

Q&Aコーナーへようこそ。歓迎いたします。ワイン醸造の資格のため勉強をされているとのことですので、マセラシオン・カルボニック(Macération Carbonique、Carbonic Maceration)のプロセス自体のことはについては説明を省きます。発酵とは呼吸のプロセスの一つで、呼吸とは基質となる物質を細胞内で分解してその化学エネルギーを取り出す生化学反応です。そして、発酵は無酸素環境下でも起こりうる反応です。ご存知のようにマセラシオン・カルボニック法では、無傷の生きたブドウ粒を密封した容器に入れ、中の空気をCO2で置換してして無酸素環境を作りますが、この時点ではベリーは生きています。ベリーは無酸素環境下に置かれると、果実の細胞内で発酵反応(Intracellular Fermentation)が始まります。
この発酵反応によってアルコールができ、その濃度が2%ほどまで発酵が進むと細胞は死に、中のジュースが漏出を始めます。したがってこの時点でブドウは死んだことになります。その後はご存知の通りです。
勝見 允行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2022-10-25
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