質問者:
公務員
ささだんご
登録番号5541
登録日:2023-01-08
花が好きで、アザレアを育てております。みんなのひろば
環境によるアザレアの半八重品種の花弁数の変化について
品種は八重品種の「朝日」です。
2020年に開花している株を購入し栽培を始めたのですが、2021年春に咲いた花はほとんどが一重の花でした。
2020年は根腐れを恐れて、かなり乾かし気味の水管理をしていました。そのためにアザレアが花芽分化する7月頃に充分に養分を吸えず、一重になったと考え、2021年は肥料と水を切らさないように管理しました。
そうしたところ、2022年春に咲いた花は多くが八重咲きでした。
いったんはそれで満足していたのですが、先日ツツジ類の専門家からお話を伺う機会があり、以下のことを教えていただきました。
①アザレアを含むツツジ類はABCモデルに従うこと
②アザレアの八重の品種には半八重と完全八重があること。
③「朝日」は半八重品種で、半八重品種は環境が良くなかったり株に力がなかったりすると一重になることがあること。
④「ローズネット」など完全八重の品種は環境に関わらず八重咲きになること。
ABCモデルに従うのであれば、八重品種はCクラス遺伝子が抑制もしくは働きが弱く、雄しべが花弁に変わっているということだと思います。上記の「朝日」の栽培結果と③を合わせると、半八重品種ではCクラス遺伝子の働きが株の栄養状態もしくはストレスによって強くなったり弱くなったりすると仮説が立てられるのですが、こんなことがあるのでしょうか。また、半八重と完全八重には、遺伝的にどんな違いがあって差が生じるのか知りたいです。
よろしくお願いします。
ささだんご様
こんにちは。日本植物生理学会の植物Q&Aコーナーに寄せられたあなたのご質問「環境によるアザレアの半八重品種の花弁数の変化について」にお答えします。
一般に花弁の数は種によって一定数に決まっていますが、この基本となる一定数より花弁が多くなることがあり、八重咲きと呼ばれます。八重咲きも、花弁数の増加があまり多くないものは半八重、とても多いものは八重として区別されます。何枚までを半八重、何枚以上を八重とするかは植物種により、栽培者の考え方により様々で、諸説があるようです。完全八重とか二重咲きとかいう呼び方もあります。様々な呼び方があるということは様々なタイプの八重咲きがあり、それは様々な原因で引き起こされるということで、関係する遺伝子も様々だということです。また、遺伝子によっては、その発現の強さが温度などの環境要因や栄養条件などによって変化することがあり、そのため同じ個体でも年によって八重になったり一重になったりすることがあるようです。
花の原基は茎頂分裂組織で作られ、初めに同心円状の4つの領域が分化し、それぞれの領域に各花器官(萼片、花弁、雄しべ、雌しべ)が作られます。今仮にこれらの領域を外側から領域1、領域2、領域3、領域4と呼ぶこととすると、領域1で萼片、領域2で花弁、領域3で雄しべ、領域4で雌しべが作られます。茎頂分裂組織のサイズと各領域のサイズは一定なので、各領域に作られる各花器官の数は一定です。しかし、これらのサイズを決める遺伝子に変異が起こった場合、あるいは、その働きに変化が起こった場合サイズが変化することがあります。領域2のサイズが大きくなれば作られる花弁の数は増えます。このような変異による花弁数の増加は多くはないので半八重になると思われます。また、領域2を決める遺伝子に変異や働きに変化があった場合、この領域が二つに増えることがあります。この場合は花弁が二重になり、二重咲きと呼ばれます。基本的に花弁数は倍増ですから、これも半八重の範疇に入るでしょう。これらの変異では、花弁の他に、萼片、雄しべ、雌しべも作られます。さらに、領域3で雄しべの代わりに花弁が作られる変異も見られます。この場合は本来の雄しべの数と同じ数の花弁が余計に作られるのが普通です。雄しべの数が多い種でこのタイプの花弁化が起これば八重と見なされるでしょう。この変異では、花弁の他に、萼片と雌しべが作られます。以上の他に、雄しべ、雌しべが作られずに花弁が増える変異があります。ABCモデルで説明される変異です。ABCモデルのCクラス遺伝子が欠損すると、領域3で雄しべが花弁に変わり、領域4では雌しべが出来ずに領域1、2、3での形成、すなわち萼片、花弁、花弁の形成が繰り返されます。雄しべと雌しべが形成されず、萼片も増えるのが特徴です。この変異では花弁数の増加が顕著なので八重と見なされると思います。ABCモデルにかかわるホメオティック遺伝子の働きは環境要因や栄養条件に影響されることは少ないので、年ごとに八重の程度が変動することは考えにくいでしょう。
あなたが育てておられるアザレア「朝日」の八重咲きがどのタイプの八重咲きなのかをはっきりさせることが必要です。花を分解されて、花弁は一つの円周上に並んでいるか、それとも二つ以上の円周上に並んでいるか、萼片も増えているか、雄しべや雌しべはあるか、などを調べれば、上述のいくつかのタイプの八重咲きのどれに相当するかが分かると思います。どのタイプの八重咲きかが分かれば、年ごとに八重の程度が変化することが不思議なことなのか、それとも、よくあることなのかが推定できると思います。
こんにちは。日本植物生理学会の植物Q&Aコーナーに寄せられたあなたのご質問「環境によるアザレアの半八重品種の花弁数の変化について」にお答えします。
一般に花弁の数は種によって一定数に決まっていますが、この基本となる一定数より花弁が多くなることがあり、八重咲きと呼ばれます。八重咲きも、花弁数の増加があまり多くないものは半八重、とても多いものは八重として区別されます。何枚までを半八重、何枚以上を八重とするかは植物種により、栽培者の考え方により様々で、諸説があるようです。完全八重とか二重咲きとかいう呼び方もあります。様々な呼び方があるということは様々なタイプの八重咲きがあり、それは様々な原因で引き起こされるということで、関係する遺伝子も様々だということです。また、遺伝子によっては、その発現の強さが温度などの環境要因や栄養条件などによって変化することがあり、そのため同じ個体でも年によって八重になったり一重になったりすることがあるようです。
花の原基は茎頂分裂組織で作られ、初めに同心円状の4つの領域が分化し、それぞれの領域に各花器官(萼片、花弁、雄しべ、雌しべ)が作られます。今仮にこれらの領域を外側から領域1、領域2、領域3、領域4と呼ぶこととすると、領域1で萼片、領域2で花弁、領域3で雄しべ、領域4で雌しべが作られます。茎頂分裂組織のサイズと各領域のサイズは一定なので、各領域に作られる各花器官の数は一定です。しかし、これらのサイズを決める遺伝子に変異が起こった場合、あるいは、その働きに変化が起こった場合サイズが変化することがあります。領域2のサイズが大きくなれば作られる花弁の数は増えます。このような変異による花弁数の増加は多くはないので半八重になると思われます。また、領域2を決める遺伝子に変異や働きに変化があった場合、この領域が二つに増えることがあります。この場合は花弁が二重になり、二重咲きと呼ばれます。基本的に花弁数は倍増ですから、これも半八重の範疇に入るでしょう。これらの変異では、花弁の他に、萼片、雄しべ、雌しべも作られます。さらに、領域3で雄しべの代わりに花弁が作られる変異も見られます。この場合は本来の雄しべの数と同じ数の花弁が余計に作られるのが普通です。雄しべの数が多い種でこのタイプの花弁化が起これば八重と見なされるでしょう。この変異では、花弁の他に、萼片と雌しべが作られます。以上の他に、雄しべ、雌しべが作られずに花弁が増える変異があります。ABCモデルで説明される変異です。ABCモデルのCクラス遺伝子が欠損すると、領域3で雄しべが花弁に変わり、領域4では雌しべが出来ずに領域1、2、3での形成、すなわち萼片、花弁、花弁の形成が繰り返されます。雄しべと雌しべが形成されず、萼片も増えるのが特徴です。この変異では花弁数の増加が顕著なので八重と見なされると思います。ABCモデルにかかわるホメオティック遺伝子の働きは環境要因や栄養条件に影響されることは少ないので、年ごとに八重の程度が変動することは考えにくいでしょう。
あなたが育てておられるアザレア「朝日」の八重咲きがどのタイプの八重咲きなのかをはっきりさせることが必要です。花を分解されて、花弁は一つの円周上に並んでいるか、それとも二つ以上の円周上に並んでいるか、萼片も増えているか、雄しべや雌しべはあるか、などを調べれば、上述のいくつかのタイプの八重咲きのどれに相当するかが分かると思います。どのタイプの八重咲きかが分かれば、年ごとに八重の程度が変化することが不思議なことなのか、それとも、よくあることなのかが推定できると思います。
竹能 清俊(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2023-01-15