一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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水面に浮遊する植物について

質問者:   一般   americium
登録番号5545   登録日:2023-01-16
現在アクアリウムの一環でホテイアオイを栽培しています。そこで、彼らのような浮遊性の植物について疑問に思ったことがあります。
ヒシやホテイアオイなどの浮遊性植物は、自然界ではいずれも波や水流が小さく滞留した水域で、かつ沿岸域に繁茂していると思います。

これらの生物が流れがある場所で生息できない理由について、水流に耐えられない、耐える構造を作るのに無駄なコストがかかるなどの可能性がありそうですが調べられているのでしょうか?
沿岸域に生息していることに関しては、陸地からの栄養塩が供給されやすいからと考えていますが、光合成を考えた場合では光を遮るものがない岸から遠い場所のほうが有利そうですがどうなんでしょうか?岸との距離と繁茂しやすさの関係などは研究されているのでしょうか?

また、植物とは違い海藻になりますが、ホンダワラ類は流れ藻として海を漂う種類があります。彼らが海面を被覆するように成長しないのは、海流の物理的影響と栄養塩に制限されているからなのでしょうか?

稚拙な質問申し訳ありませんが、
お力添えをいただけると幸いです。
americium 様

Q&Aコーナーへようこそ。歓迎いたします。 
ご質問の内容に少々戸惑うのですが、私なりに整理して回答いたします。もし期待されている回答ではない場合は、もう一度御質問ください。
ホテイアオイもヒシも淡水に生育する水生植物です。ホオテイアオイはウキクサやサンショウモ(シダの仲間)と同じく水面に浮かんでいるので浮水(葉)植物とも呼ばれます。他方、ヒシやコウホネやジュンサイ、ヒツジグサは、やはり葉は水面に浮いていますが、根が水底の土に生えています。ハス、コウホネ、ジュンサイなどは地下茎で繁殖します。これらは抽水植物と呼ばれていますが、その仲間には葉、茎が水上に突き出ている、アシ、ガマ、マコモなども含まれています。
ところで、ホテイアオイはブラジル原産の淡水植物で、日本では侵略的外来種/要注意外来生物に指定されています。とても繁殖力が強い。
植物は長い進化の過程で、それぞれの種が生育と繁殖に適した生活の様式を獲得してきたと考えられます。日本には500種類以上の水生植物があるようです。水のあまり動かない湖沼や池、貯水池、緩やかな水路を好む水生植物もいます。浮水植物はその仲間です。他方、水底に根を張っていて、水没して生育する植物もあります。沈水植物と言いますが、カナダモ、アマモ、バイカモ、シャジクモなどなど。流水の中でも繁殖する植物もあります。セキショウモ、バイカモ、ミズオオバコなどです。水流の強さによって葉の形やサイズが影響を受けるようです。
植物は生育する場所の環境の影響を避けることができませんから、最適でないにしても致死的な条件にならない限りなんとか生き延びます。
ところで、海藻はれっきとした植物です。藻類という分類群の中にあります。また、ホンダワラが海面を浮遊して生育しているのではなくて、浮いているのはちぎられた体の一部です。藻類の場合は根ではありませんが、根に相当する付着器で海底や沿岸の岩に固着して育ちます。栄養は体全体で周囲の水/海水から吸収します。
ご質問のような研究は見当たりませんが、沈水植物が河川の流れや水量にどんな影響を及ぼすかのような土木関係の研究はあるようです。
勝見 允行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2023-01-21