一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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アマリリスの花の色素はどこで合成されますか

質問者:   一般   植物好き
登録番号5567   登録日:2023-02-13
初めまして。

赤色のポットアマリリスを初めて育てています。

花芽から開花するまでの成長する様子を観察しています。
最初、花茎の球根に近いところとシース(でいいのでしょうか、蕾を包んでいるもの)の基部が濃い目の赤色をしていました。

花茎が伸びてシースが開いて蕾が見えるようになると、花茎の球根に近いところやシースの基部の赤色が薄まってその代わりに蕾が赤くなっているように思えます。

アマリリスの花の色素はどこで作られているのでしょうか。

私が考えたものは以下の3つになります。

A.花茎の球根に近いところで作られて花に移動する
B.花で作られている(花茎の色は関係がない)
C.花、花茎の両方で作られている

この中に答えはありますか。
もしくは全く別の仕組みでしょうか。

教えていただけると幸いです。
植物好き樣

Q&Aコーナーへようこそ。歓迎いたします。アマリリスはヒッペアストラム(Hippeastrum)属の植物の総称で、非常に多くの園芸品種があります。アマリリスの花の赤い色素はアントシアニン系の色素です。 
Hippeastrum属も花の色素を分析した研究(*)では、含まれるアントシアニン(anthocyaninns)はシアニディン(cyanindin)とペラゴニディン(pelargonidin)の配糖体ということです。アントシアニンは植物のどの器官でも合成されますが、サイトソル(細胞質)に分散して存在するのではなく、液胞(vacuole)内に蓄積されます。アントシアニンは長距離、例えば根、茎から葉や花へ、輸送される事はありません。ご質問にありますように、花茎の基部や、シース(このように蕾を包んでいる薄い覆いは、植物学では「苞 : ホウ、 bract」と言います)でもアントシアニンは作られますが、これらのアントシアニンは他へ輸送される事はありません。従って、お考えの仕組みのうち、Cが妥当ですが、Bも間違いではありません。花のアントシアニンは花弁で合成されますが、花茎で合成されたアントシアニンは花弁とは関係はありません。
なお、アントシアニンは細胞内の小胞体(ER:endoplasmic reticulum) のサイトソルに接した面で合成されてから、液胞内に取り込まれますが、その仕方は、小胞(vesicles)の中にパッケージされて運ばれる場合と、液胞膜にある膜輸送体(membrtane transporter) の助けを借りて膜を透過する場合の2通りが研究されています。
花の色素については本コーナーでは非常に沢山取り上げられていますので、「花の色素」「植物の色素」「アントシアニン」等々の項目で検索してもみてください。

参考
*Anthocyanins from flowers of Hippeastrum cultivars. R. Byamukama et.al. Scientia Horticulturae 109:262 - 266 (2006)
アントシアニンの液胞への取り込みに関する問題は以下の総説で扱っています。どちらもネットで閲覧できます。
Spotlight on the overlapping routs and partners for anthocyanin transport in plants. Physiologoa Plantarum. 171(4) : 868-881 (2021)
勝見 允行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2023-02-15
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