一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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砂漠に生息する一年生植物

質問者:   高校生   ナカヤマ
登録番号5574   登録日:2023-02-27
こんにちは、高校2年生の者です。生物基礎の授業でラウンケルの生活系を習った時、砂漠では一年生植物の種数の割合が最も大きいことを知りました。しかし、砂漠の画像を見ても一年生植物は見当たりません。一年生植物の割合が大きいと言われても実態が掴めません、砂漠に生息する一年生植物は具体的に何がいるか教えていただきたいです。
教科書は生育する植物の種数の割合を示してくれています。もしかしたら、この「種数」の割合であることが一年生植物の割合が大きいことに影響しているのでしょうか。それかもしかしたら「砂漠」の指す範囲が意外と広いのでしょうか。
ナカヤマ様

こんにちは。日本植物生理学会の植物Q&Aコーナーに寄せられたあなたのご質問「砂漠に生息する一年生植物」にお答えします。

 砂漠の画像を見ても一年生植物は見当たらないということですが、確かに砂漠を写した写真や映画などを見てまず目につくのはサボテンの仲間のような大型の植物が多く、これらは多年生植物です。しかし、一年生植物が無いわけではありません。一年生植物は毎年発芽するとは限らず、発芽してもすぐに開花結実して枯死し、生育中も草体が小さいので、見る機会が少なく、見つけにくいだけではないでしょうか。小型の草本でも、風に吹かれて砂漠を転げまわる枯草は西部劇の背景として見ることが多いですが、このタンブルウィードはヒユ科などの一年生植物です。稀に出現する広大な花畑が話題になる南米チリのアタカマ砂漠の植物も多くが一年生植物です。数年に一度と言われる稀な降雨があったときに短期間で発芽から生長、開花、結実までを完了するわけですから、一年生でなければかなわないことです。アオイ科、アカネ科、ナス科などの植物のようです。
 ラウンケルの生活形に関連して教科書が示している「生育する植物の種数の割合」は、五つの生活形に分類される植物の種の数を割合で示したものであって、個体の数や総量の割合ではありません。種の数が多くても、小さく、1年のうち短期間しか出現しない一年生植物は見る機会が少ないので「見当たらない」と思えるのでしょう。
 教科書の指す砂漠は自分の理解する砂漠より範囲が広く、多くの一年生植物も育つ場所をも含むのではないか、と考えられたのでしょうか?実際に砂漠に行って、長期間観察をすれば疑問は解消するでしょうが、それは容易ではないので、多くの資料を子細に検討されるとよいと思います。
竹能 清俊(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2023-03-06
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