質問者:
大学生
質問者 P
登録番号5581
登録日:2023-03-15
多肉植物を育て始めたのですが、育て方を調べている中で水をあげすぎると徒長するということが分りました。この理由としてどのようなことが考えられるのでしょうか。みんなのひろば
徒長と水の関係について
お手数ですがご回答いただければ幸いです。
質問者 P 様
Q&Aコーナーへようこそ。歓迎致します。多肉植物を育てておられるようですが、どんな種類でしょうか。多肉植物(Succulents)という言葉は分類学上の言葉ではなく、植物が身体全体あるいは一部(葉、茎、根)の柔組織に多量の水分を貯蔵している植物をひっくるめて言う言葉です。その種類は25以上の科に亘って分布しています。1000種以上含む科は、サボテン科(Cactaceae):1600、ベンケイソウ科(Crassulaceae):1300、ハマミズキ科(Aizoaceae):2000、トウダイグサ科( Euphorbiaceae):>1000があります。
私自身は多肉植物(サボテンを除いて)を育てたことがありませんし、また、多肉植物の栽培条件は本学会がカバーする研究分野でもありませんが、植物に水をやり過ぎるとどうなるかという一般的なことを言うと、植物は水の供給が過多であっても、不足してもそれを負のストレスとして感知します。自然における過多の給水の例としては、洪水などによる冠水(湛水)があります。畑などで根が長い間水に浸ったままになると土壌は酸欠になり、根は機能しなくなり、時にはバクテリアの繁殖で腐敗します。その結果植物体全体の成長は抑えられる事になります。ただ、冠水に耐性のある種の植物(Rumex:スイバの仲間など)では、冠水によって誘導されるエチレン(植物ホルモン)の働きで茎葉や葉柄が伸長して、そこに「通気組織」が形成され、根への酸素を供給するという研究報告があります。質問者 Pさんが育てている特定の多肉植物が冠水耐性であるとすれば、同じようなことが起きるのかもしれませんが、おそらくそういう事はないと思います。
もう一つ、植物における徒長とは一般に茎(枝なども)が著しく伸びることです。例えば、樹木で新梢が他の枝よりも勢いよく伸びる場合、これを「徒長枝」と言います。また、ジベレリンの発見に繋がった、イネの馬鹿苗病による植物体の著しい伸長も徒長と言います。茎が伸長するということは、茎の節(葉がついている箇所)と次の節の間、つまり節間が伸びるということです。伸長成長は細胞のレベルでは、細胞が縦に(茎の軸方向)に伸びる事によっておきます。そして、それを促している内的因子は植物ホルモンのオーキシンとジベレリンです。
ご質問の多肉植物が「徒長する」という事は、上記のように茎が著しい伸長成長をすること理解していいでしょうか。実例があるとわかりやすいのですが。質問者 Pさんが育てておられる多肉植物が、エケベリア、グラプトベリア、グラプトプトセダムのような茎の見えない丸っこい葉がこんもりと覆い被さったようなものだとすれば、徒長が起きれば植物体が立ち上がって、普通の植物のように茎が伸びて葉がつき出ているような形態になることですね。
英語の多肉植物の栽培に関する記述を見ると、徒長に相当する言葉は「leggy」と表現されています。leggy succulents(ひょろっと伸びた、スラリとした多肉植物)に育つのは、日照(光量)が少ない時に一番起こり易いようです。これは他の植物も同じです。その最たるものはモヤシ(etiolation)でしょう。そして、ご質問のように過剰給水もleggy succulents をもたらすとも書いてあります。しかし、水の過剰供給が徒長をもたらすと言う場合、光量不足で起きる徒長と同じ性質のものであるのかどうかははっきりしません。
多肉植物の栽培で水を過多に与えると、葉はできるだけ水を吸い上げて貯蔵しようとするため、柔らかさが増し、透明化します。他方根腐れが起きて、その細菌は葉にも広がり、葉はやがて黒くなり落葉していきます。そうなると節間はむき出しになり、植物体全体はホッソリと見えるようになるのではないかとも想像します。また、ある種では、給水過剰で根が酸欠になると、根が酸素を求めて地上へ押し上げられ、植物体がのびた状態になるという記述もあります。
「徒長」を成長が促されることと考えると、単に水だけでは成長は起きません。肥料も適度・適性に与えられており、そして光量も十分であれば、根が腐らない程度に給水してやると、ふうつの植物がそうであるように、十分以上の栄養が絶えず根から供給される結果、植物体全体の成長が促されるだろうと思います。そうすれば茎も伸長するという事になります。
多肉植物はもともと砂漠のような給水条件の悪い、また養分供給も少ないなど、ある意味でストレスの多い環境条件に適応してあのような形態の植物になっているのだと思います。従って、成長が促されるような条件が与えられると、普通の植物のように成長するのではないかと想像します。
多肉植物における給水過剰による徒長(leggy growth) が実際どういうものなのか分かりませんので、正鵠をえた説明ができていないかもしれません。ご自分で試してみられてはいかがでしょうか。
Q&Aコーナーへようこそ。歓迎致します。多肉植物を育てておられるようですが、どんな種類でしょうか。多肉植物(Succulents)という言葉は分類学上の言葉ではなく、植物が身体全体あるいは一部(葉、茎、根)の柔組織に多量の水分を貯蔵している植物をひっくるめて言う言葉です。その種類は25以上の科に亘って分布しています。1000種以上含む科は、サボテン科(Cactaceae):1600、ベンケイソウ科(Crassulaceae):1300、ハマミズキ科(Aizoaceae):2000、トウダイグサ科( Euphorbiaceae):>1000があります。
私自身は多肉植物(サボテンを除いて)を育てたことがありませんし、また、多肉植物の栽培条件は本学会がカバーする研究分野でもありませんが、植物に水をやり過ぎるとどうなるかという一般的なことを言うと、植物は水の供給が過多であっても、不足してもそれを負のストレスとして感知します。自然における過多の給水の例としては、洪水などによる冠水(湛水)があります。畑などで根が長い間水に浸ったままになると土壌は酸欠になり、根は機能しなくなり、時にはバクテリアの繁殖で腐敗します。その結果植物体全体の成長は抑えられる事になります。ただ、冠水に耐性のある種の植物(Rumex:スイバの仲間など)では、冠水によって誘導されるエチレン(植物ホルモン)の働きで茎葉や葉柄が伸長して、そこに「通気組織」が形成され、根への酸素を供給するという研究報告があります。質問者 Pさんが育てている特定の多肉植物が冠水耐性であるとすれば、同じようなことが起きるのかもしれませんが、おそらくそういう事はないと思います。
もう一つ、植物における徒長とは一般に茎(枝なども)が著しく伸びることです。例えば、樹木で新梢が他の枝よりも勢いよく伸びる場合、これを「徒長枝」と言います。また、ジベレリンの発見に繋がった、イネの馬鹿苗病による植物体の著しい伸長も徒長と言います。茎が伸長するということは、茎の節(葉がついている箇所)と次の節の間、つまり節間が伸びるということです。伸長成長は細胞のレベルでは、細胞が縦に(茎の軸方向)に伸びる事によっておきます。そして、それを促している内的因子は植物ホルモンのオーキシンとジベレリンです。
ご質問の多肉植物が「徒長する」という事は、上記のように茎が著しい伸長成長をすること理解していいでしょうか。実例があるとわかりやすいのですが。質問者 Pさんが育てておられる多肉植物が、エケベリア、グラプトベリア、グラプトプトセダムのような茎の見えない丸っこい葉がこんもりと覆い被さったようなものだとすれば、徒長が起きれば植物体が立ち上がって、普通の植物のように茎が伸びて葉がつき出ているような形態になることですね。
英語の多肉植物の栽培に関する記述を見ると、徒長に相当する言葉は「leggy」と表現されています。leggy succulents(ひょろっと伸びた、スラリとした多肉植物)に育つのは、日照(光量)が少ない時に一番起こり易いようです。これは他の植物も同じです。その最たるものはモヤシ(etiolation)でしょう。そして、ご質問のように過剰給水もleggy succulents をもたらすとも書いてあります。しかし、水の過剰供給が徒長をもたらすと言う場合、光量不足で起きる徒長と同じ性質のものであるのかどうかははっきりしません。
多肉植物の栽培で水を過多に与えると、葉はできるだけ水を吸い上げて貯蔵しようとするため、柔らかさが増し、透明化します。他方根腐れが起きて、その細菌は葉にも広がり、葉はやがて黒くなり落葉していきます。そうなると節間はむき出しになり、植物体全体はホッソリと見えるようになるのではないかとも想像します。また、ある種では、給水過剰で根が酸欠になると、根が酸素を求めて地上へ押し上げられ、植物体がのびた状態になるという記述もあります。
「徒長」を成長が促されることと考えると、単に水だけでは成長は起きません。肥料も適度・適性に与えられており、そして光量も十分であれば、根が腐らない程度に給水してやると、ふうつの植物がそうであるように、十分以上の栄養が絶えず根から供給される結果、植物体全体の成長が促されるだろうと思います。そうすれば茎も伸長するという事になります。
多肉植物はもともと砂漠のような給水条件の悪い、また養分供給も少ないなど、ある意味でストレスの多い環境条件に適応してあのような形態の植物になっているのだと思います。従って、成長が促されるような条件が与えられると、普通の植物のように成長するのではないかと想像します。
多肉植物における給水過剰による徒長(leggy growth) が実際どういうものなのか分かりませんので、正鵠をえた説明ができていないかもしれません。ご自分で試してみられてはいかがでしょうか。
勝見 允行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2023-03-26