一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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作物ごとの水素イオンの量

質問者:   自営業   tabe
登録番号5617   登録日:2023-04-28
私は、レタス農家をやっています
連作障害を防ぐ為にキャベツも少し耕作しています
1作目にレタスを作り、同じマルチを使って
2作目キャベツを作った畑で、両作共に順調で歩留りも好調だったのですが
耕作終了後に、土壌分析をした結果phがかなり下っていて、レタスを同じやり方で二毛作をした畑よりもphが下っていました。

そこで気になったのですが、植物は根から水素イオンを出していて
その水素イオンが土壌のphを酸性に傾ける事は有名ですが
作物によって根から出る水素イオンの量は違っていたりするのでしょうか?
キク科の作物は水素イオンの出る量が少ないがアブラナ科の作物は水素イオンを出す量が多い、又はアルカリ土壌の好む作物が水素イオンを出す量が多いなど

教えて頂けると幸いです。よろしくお願い致します。
tabe 様

ご質問、ありがとうございました。
土壌の酸性度に関しまして、農林水産省のWebサイトで説明されていますので、参考になればと思います。

<https://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/hozen_type/h_sehi_kizyun/attach/pdf/tottori01-1.pdf> tottori01-1.pdf (maff.go.jp)、
<https://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/hozen_type/h_sehi_kizyun/pdf/ntuti16.pdf> <5461726F2D82508255814087572D332D28312D332989BB8A7790AB89FC9150>(maff.go.jp)

ご承知のように、植物は17種類の栄養素が成育に必要ですが、炭素以外はすべて土壌から吸収します。この必須栄養素の多くは、アルカリ性を示すものが多く(例えばカルシウムやマグネシウムなど)、植物に吸収された後は、物質を構成していた酸性を示す物質が残存します。例えば、炭酸カルシウムで与えた場合は、炭酸イオン(弱酸性です)が土壌中に残ります。多量に必要なカリウムも同様です。一般に、栽培されている作物の生重量が大きいほど、根の周りにある土壌中の栄養素は多く吸収されると考えられますので、ご質問のような結果になった可能性はあるかも知れません。植物は、物質を吸収する際に水素イオンを放出している場合もあり、根の周辺では酸性化がさらに進む可能性はあります。ただ、土壌全体の酸性化に占める植物の関与は、それほど大きくないと思われます。余談ですが、施肥されたリン酸は、酸性土壌中ではアルミニウムと結合し、不溶化します。植物は、このリン酸アルミニウムからリン酸を取り出すためにクエン酸(有機酸です)を根から放出してアルミニウムと結合させるというような離れ技もしますが、有機酸ですので土壌細菌に利用され、土壌の酸性化にはそれほど影響を与えないと思われます。

土壌の酸性化に関しては、雨や雨に含まれる炭酸イオンによるアルカリ性の栄養素の土壌からの溶脱が最も影響していると考えられており、雨の多い日本では、特にそれが顕著です。日本の多くの土壌が、火山灰由来の酸性土壌であることも酸性化に拍車をかけています。大気中の炭酸ガスは年々右肩上がりで増えていますし、酸性成分を含むPM2.5などの微粒子も大気中に含まれますので、栽培を終えた後の土壌管理は、今後とも重要だと思います。
山谷 知行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2023-05-08
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