一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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植物の睡眠について

質問者:   大学院生   Camellia
登録番号5624   登録日:2023-05-09
動物では主に睡眠をとるものが多いと思いますが、植物にも「睡眠」ととらえられるような行為はあるのでしょうか。
思い浮かぶものが夜になると気孔を閉じるといった初歩的なことしかなく、自分の知識不足を痛感しました。
睡眠のような植物の一次的な休息活動などありましたら教えていただきたいです。
Camellia 様

Q&Aコーナーへようこそ。歓迎致します。
動物における睡眠と同じ現象は植物にはありません。しかし、日周期において、昼夜(明暗)に反応する植物の生理/形態現象はあります。就眠運動(nycnasty)と呼ばれている現象です。昼夜運動とも言います。例えば、インゲンの葉は昼間は地面と並行に平らに開いていますが、夜になると垂れた耳のようになります。また、花は夜気温が下がるとしぼみ、上昇すると開くものが多いです。このように光や温度に反応して同じ運動を繰り返す現象を植物学用語で「傾性(nasty)」と言います。光が引き金の時は「光傾性(photonasty):傾光性]、温度が引き金のときは「温度傾性(thermonasty:傾熱性」と呼んでいます。植物は夜になると、光合成をしないので、夜は休んでいると考えれば、睡眠をとっているのかもしれませんが、この睡眠は疲れた身体の機能を休めるといった類のものではありません。植物は常時昼であっても死ぬことはなく、成長を続けることができます。傾性については本コーナーで過去に幾つかの質問がとり挙げられていますので、それを読んでください。例えば、登録番号4736, 3765, 3707他。
傾性の他に植物には休眠(dormancy)という現象があります。これは種子や芽が形成されてからすぐ成長を始めるのではなく、一時的に成長を停止している状態にあることです。環境条件が整ったら成長を再開します。休眠に関しても本コーナーでたくさん扱われていますので、それらを読んでください。例えば、登録番号4388, 4818, 5304など。他に「休眠」で検索していただくと沢山あります。
勝見 允行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2023-05-11