一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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維管束の並びと植物の構造

質問者:   教員   陽
登録番号5627   登録日:2023-05-10
ブドウの実を食べ終わった際に残る軸をみると、根と同じような形状(主根から枝分かれした側根)のように主軸から枝分かれしているように見られ、なるほど双子葉類の特徴なんだと感じました。
そこから維管束の並び方と根や葉脈のつくりが関係していると考えるようになりました。

教科書やネットの中では双子葉類と単子葉類の違いは
①網状脈と平行脈
②主根側根とひげ根
③維管束の並び
と記載されていますが、上記の3つの違いは実際にはどのような関係性になっているか疑問に思いました。

維管束のならびと葉脈や根の構造にはどのような理屈があるのでしょうか?
陽 様

ご質問、ありがとうございました。維管束組織などの植物組織、器官の発達、構造、機能等の研究を牽引されています奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス領域の出村拓教授から、以下の回答を頂きました。

【出村先生の回答】
維管束の構造についての質問と回答はこのコーナーに数多くありますので、検索していただければと思います。ここでは、葉の維管束と茎の維管束の繋がり方を中心に、分かる範囲でお答えしたいと思います。

まず、双子葉植物についてです。ご存じの通り、双子葉植物の葉脈は網状になっていますが、葉の根元の茎(葉柄といいいます)では集合して1本~3本くらいの維管束にまとめられます。ここでは、中心の維管束を主脈、それ以外を側脈と呼ぶことにします。さて、これらの維管束が茎の中に入り込んでいますが、多くの場合、それぞれが他の葉に繋がる維管束と合流しています。例えば、ある葉の主脈は、上や下に位置する別な葉の側脈と合流します。主脈が2つに分かれて他の葉の維管束と合流することもあります。双子葉植物の茎では、このようにいくつかの維管束が合流しつつ環状(リング状)に配置されています。さらに、それぞれの茎の維管束は茎と根の境目付近で合流して根の維管束に繋がります。そのため、一本の茎の維管束はいくつもの葉と繋っているとともに根の維管束とも繋がっています。

つぎに単子葉植物についてです。単子葉植物の構造をイメージしてみましょう。一番古い葉が最も外側に、新しい葉が順次その内側に配置されています。タケノコの構造をイメージするのが簡単かもしれません。一番外側の葉を茎から剥がすと、少し上に次の葉がついているのが分かると思います。そして、それぞれの葉がぐるっと茎を包むように茎と接続しています。イネやトウモロコシもよく似た構造をしています。ここで葉脈と茎の維管束の配置の関係ですが、それぞれの葉の平行脈が合流することなく、茎に潜り込んでいます。そして、一番外側の葉の維管束が茎の一番外側に、その内側の葉の維管束が茎の内側に配置されています。そのため、茎の中心部ほど若い(内側の)葉に繋がる維管束ということになります。また、単子葉植物でもこれらの茎の維管束は茎と根の境目付近で合流して根の維管束に繋がっているようです。さて、ササ(やタケ)、あるいはユリの葉のことを考えて見ましょう。私自身、ちゃんと調べたことはありませんが、これらは平行脈ですが、双子葉植物と同様、維管束は葉の根元でまとまり、葉柄ではひとかたまりとなって茎に潜り込んでいるのだと予想できます。興味深いので、私の研究室で所有するマイクロフォーカスX線CT装置を用いて一度調べてみたいと思います。

 さらにここで双子葉植物と単子葉植物の発生・成長の大きな違いについても考えて見ましょう。双子葉植物は環状(リング状)に配置した維管束を利用して、外側に向かって成長(肥大成長、二次成長)して、徐々に太っていきます。多年生の樹木をイメージしてもらえば良いです。一方で単子葉類は肥大成長せずに、その多くは一年生です。そうすると、植物は進化の過程で、多年生のライフサイクルを手に入れるために、環状の維管束配置やそのための葉と茎の維管束の繋ぎ方を獲得したのかもしれません。

 維管束のならびと根の構造についての質問についてはちゃんとお答えすることができませんが、茎と根の境目で維管束が1つにまとまることを考えると、葉の維管束のならびと根の構造にはとくに関連はないと思います。
出村 拓(奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス領域)
JSPPサイエンスアドバイザー
山谷 知行
回答日:2023-05-22
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