一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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ケヤキの葉の大小について

質問者:   会社員   sd
登録番号5633   登録日:2023-05-12
最近散歩がてら植物を観察・勉強し始めました。
ケヤキの葉には大小あることは最近しりました。 小さい方は実があって、秋に風散するらしいですね。
さて、散歩道に2本のケヤキが並んでいて、4月ころから、1本は殆どすべてが小さい葉、1本は殆どすべてが大きい葉で、全く見た目が異なります。 独特の鋸歯の形と、樹皮のうろこ状の剥がれ方からみてケヤキであるのは間違いないと思います。

質問:風散が目的であるとするならば、なぜ全くこんなに違うのでしょうか? 理由とか原理があれば教えていただきたいです。雌雄同株らしいので雄株、雌株の差ではないですよね。
sd様

Q&Aコーナーへようこそ。歓迎いたします。葉のサイズが全く異なる二本のケヤキの木があるということですが、写真がないのでなんとも言えません。調べてみましたが、分かった限りではそのような変種があるという記載は見つかりませんでした。しかし、ケヤキの葉のサイズは一定ではなく通常でも葉身は3〜13cm、幅2〜5cm、葉柄0.1〜0.6cmの範囲にあります。大きい葉は小さい葉に比べれば4倍もあります。一般に小型の葉の基部には果実はできますが、大きい葉の基部にはみられません。さらに、落葉する時は大きな葉は一枚ずつ散りますが、小さい葉は小枝についたまま落葉します。そして通常その小枝についた小型の葉の葉柄の基部には果実がついています。どうしてそんな違いがあるのかということ、つまり生態学的意義については、次のような推測的説明があります。植物の個体は繁殖のために種子をできるだけ広範囲に広げたい。ケヤキは小枝に葉と種子(果実)をつけたままだと、風によって多少とも親木から離れた所へ飛散させることができる。他方、葉は光合成によって栄養を補給する重要な器官なので、大きいほど光合成効率は大きい。ということで、いわば分業的役割をしているということです。
ケヤキの葉が木全体で大きいき場合は、過度の剪定などによって樹勢(体力)が衰えているため、種子を生産をするより樹勢回復のため、より多くの光合成活動ができるよう大型の葉が作られていると考えられます。街路樹などで観察されることのようです。一本の木の中で大型の葉が多い枝を見ることがありますので、何かそういう必要があったのだろうという推測もできます。いずれにしろ実験的に証明されたことではありません。
生物のこのような現象について確たる理由とか原理を述べるのは難しいことです。
勝見 允行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2023-05-19
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