一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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うどんこ病にかかりやすい植物

質問者:   会社員   山本seni
登録番号5637   登録日:2023-05-16
私は枸杞を植えておりますが、最近、葉に白い粉様のものが付着しております。うどんこ病と疑い、色々調べると「登録番号4536」に「トマト、ナス、キュウリなどがかかりやすいといわれています」とありました。「あ、枸杞もナス科だからか!」と思ったところです。
そこで一点教えてください。トマト、ナス、キュウリなどがうどんこ病にかかりやすいのは何故なのでしょうか?
宜しくお願い致します。
山本 seni 様

ご質問、ありがとうございました。植物病理学を専門にされています東北大学大学院農学研究科の高橋英樹教授から、以下の回答を頂きました。

【高橋先生の回答】
家庭菜園でトマト、ナス、キュウリなどを育てますと、うどんこ病の発生が目につきますので、ナス科やウリ科植物がうどんこ病にかかりやすいと感じるのは自然だと思います。しかし詳しく調べてみますと、約20科170種の植物で、うどんこ病菌の感染が報告されています。例えばコムギやオオムギなどの単子葉植物、バラなどの木本植物でも、しばしばうどんこ病の発生が確認されます。ところで、野生のナス科植物(例えば中米が起源のトマト)は、それほど激しく病気が発生していません。それは、野生のナス科植物の多くは、アルカロイドなどの抗菌物質を植物体内にたくさん蓄積しているからです。このアルカロイドなどの抗菌物質は、人間に対しても強い毒性を示します。人間は長い農耕の歴史の中で、アルカロイドなどの毒性物資の含量が低い植物個体を選抜あるいは育種してきました。つまり農業の営みの中で栽培されるようになった作物は、病気に罹りやすい作物でもあったということです。もちろん、病原菌の宿主特異性や病原体に対する作物の感受性は、複雑なメカニズムによって制御されているのですが、ナス科植物が病気に罹りやすくなった理由の一つは、栽培化の過程でアルカロイドなどの抗菌物質含量が低下したことにあるのかもしれません。
高橋 英樹(東北大学大学院農学研究科)
JSPPサイエンスアドバイザー
山谷 知行
回答日:2023-05-19
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