一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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ポットのお花の二酸化炭素吸収量は?

質問者:   一般   お花大好き
登録番号5664   登録日:2023-06-09
ガーデニングが好きでよく季節のお花を植えて楽しんでいます。植物を植えることで、二酸化炭素吸収と排出の削減として市や町が花壇作り等に取り組んでいますが、実際のところどのくらいの効果があるのでしょうか?
植物の種類や大きさ等で値は変わってくると思いますが、例えば、今回自宅の花壇にマリーゴールド・日日草のポットを植えようとしています。1ポット当たりどのくらいの二酸化炭素吸収量なのでしょう?
よろしくお願い致します。
お花大好き 様

この質問コーナーをご利用いただきありがとうございます。大気中の二酸化炭素濃度を低下させることを目的に花壇作りに取り組んでおられるものと理解します。

植物は「光合成」と呼ばれる生理過程で光エネルギーを注入することにより大気中の二酸化炭素を素材に体構成物質である有機化合物を合成し、「呼吸」と呼ばれる生理過程で有機化合物に含まれるエネルギーを取り出して二酸化炭素を大気中に放出します。光合成や呼吸の活性は、植物の種類によって大きく異なることは勿論、生育の段階や光・温度・水分などの環境条件により大きく変動します。植物体が成長を続けている段階では光合成の速度が呼吸の速度を上回っていると大局的には言えます
が、光のない夜間や成長を終えた生育段階では植物は二酸化炭素の放出源となっています。

ご質問ではマリーゴールドや日日草の1ポット当たりの二酸化炭素の吸収量が問われていますが、上述のような事情があるため問題は複雑になります。生育のある時点での吸収と放出の収支の総決算としての二酸化炭素の吸収(固定)量を見積もる方法としては、蓄積している有機化合物の量を乾燥重量(登録番号1351参照)として測定するのが簡便です。重量として比較する場合、大雑把に見積もって植物体の乾燥重量の1.5倍程度の数値が吸収された二酸化炭素の重量に相当することになります。マリーゴールドや日日草の1ポット(1個体)の生の重量が例えば200グラムであるとすると、その乾燥重量から見積もられる吸収された二酸化炭素の重量は60~150グラム程度になります(植物体の水分含量が50~80%として)。ところで、この数値の規模を何と比較すると「実際のところどのくらいの効果があるか」について考えることになるでしょうか? 例えば、人類の活動に伴って一年間に大気中に放出される二酸化炭素の量でしょうか? このコーナーのQ&Aでは植物の二酸化炭素吸収量の問題がいろいろな角度から議論されておりますので、是非、ご参照ください(例えば、キーワード「二酸化炭素吸収量」で検索)。

なお、二酸化炭素の吸収と排出の削減について考える際には成長を終えた植物体の扱いが問題になります。枯れた植物体が腐敗や燃焼で失われる際には二酸化炭素が放出されますので、状況によっては最終的に「カーボンニュートラル(吸収と放出が相殺される)」となりますね。
佐藤 公行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2023-06-13
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