一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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寒天培地の作り方

質問者:   高校生   える
登録番号5675   登録日:2023-06-28
現在、トマチンが持つアレロパシーの研究を行おうとしています。
その際に、寒天培地にトマチンの抽出液を混ぜ込んでコマツナを育てる予定です。

学校の実験室で行える規模で、植物を育てるための寒天培地を作る際どのような材料や方法で培地を作ればいいのでしょうか?
えるさん

Q&Aコーナーへようこそ。歓迎いたします。
トマチンを含むトマトの抽出物のコマツナの成長への影響を調べるという実験ですね。ご質問に答える前に、あなたの実験計画について関係することを初めに述べておきます。トマチンはジャガイモのソラニンと同じようにアルカロイド配糖体の有毒物質です。本コーナーの登録番号803を読んでおられると思いますが、まだでしたら実験を始める前にぜひ読んでください。トマチンがアレロパシー(他感物資)として他の植物の成長になんらかの影響を及ぼすかどうかについては懐疑的ですが、有毒物質としてアブラムシなどへの忌避物質としての働きがあると言われているようですね。植物の抽出物はその抽出方法によっても異なりますが、たいていは植物の成長を抑えるようないろいろな阻害物質が含まれています。したがって、トマトの粗抽出物が試験でコマツナの成長を抑えたとしても、それがトマチンの作用であるとは言えませんので注意してください(アレロパシーのことは本コーナーの登録番号4407, 4195, 3704を読んでください)。
あなたの実験では、おそらくコマツナの種子を抽出物を含む寒天培地に蒔いて、その発芽、芽生の成長具合を調べるということだと思います。種子の発芽と初期の成長を観るだけだったらショ糖などの栄養分を加えません。栄養分がある培地で時間をかけて観察する場合は、カビやバクテリアが繁殖しますので材料など滅菌が必要です。寒天の濃度は0.5%~1.5%(W/V)くらいが使われます。大きめのビーカーなどに必要量の寒天(できたら粉末の)と蒸留水を入れて、熱を加え、溶かしください。家庭でジェリーを作るのと同じです。溶けている間に容れ物に分注する。容器は実験室にあればペトリ皿(シャーレ)とか、なければ、ジャムなどの円筒状のガラス容器を使えば良いでしょう。抽出物を混ぜ込んで寒天を溶かすよりは別の方法も考えてはどうでしょうか。農林水産省費安全技術センターによる次の文献を参考になさると良いでしょう。ネットで閲覧できます。
「植物に対する害に関する栽培試験の方法・解説(2020)」の中の「簡易マニュアル」それ以外も参考になります。
実験していてわからないことが出てきたら、また質問してください。
勝見 允行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2023-07-02
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