一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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ポリフェノールオキシダーゼとポリフェノール

質問者:   会社員   tnk
登録番号5683   登録日:2023-07-08
ポリフェノールオキシダーゼは葉緑体に存在すると知ったのですが、ここで作られ貯蔵されているのでしょうか。また、この葉緑体は葉だけでなく樹木の幹や枝、根にもあると考えてよろしいでしょうか。またこれと反応するポリフェノールは液胞内のポリフェノールだけでなく、乳液にも含まれていることもありますでしょうか。
tnk様

みんなのひろば、植物Q&Aへようこそ。質問を歓迎します。
回答は、植物の二次代謝産物合成の酵素と遺伝子の研究が専門の、小関良宏博士(理学)(東京農工大学名誉教授)にお願いしました。

【小関博士の回答】
ポリフェノールオキシダーゼ (PPO) は葉緑体だけでなく、葉緑体に分化する前の色素体にも存在しています。色素体は葉でだけでなく、植物のほぼすべての細胞に存在していて、もちろん根にもあります。サツマイモ(根)やジャガイモ(塊茎)の中にもあります。またりんごの果実の中にもあります。すなわち葉緑体に分化していなくても、PPO はこれら植物体の各種組織・器官の細胞の中の色素体にあります。一方で、その基質となるフェノール性の化合物は液胞の中に局在しています。このため、生きている細胞では基質は液胞に、酵素(PPO) は色素体という別々のコンパートメント(細胞内区画)にあるために混ざり合わず、反応が起こることはありません。サツマイモ(根)やジャガイモ(塊茎)やりんご(果実)を切って空気にさらしておくと茶色くなる(褐変化)するのは、細胞が切られるということで、細胞が破壊されて色素体内の PPO と液胞内のフェノール性化合物が混じり合い、またこの酵素活性には酸素が必要であるため、空気にさらされて酸素が供給されることでその反応が進行し、フェノール性化合物が重合することでポリフェノールとなり、そのポリフェノールの色が茶色いため褐変化します。すなわち、この反応が進行するには酸素が必要なわけですから、たとえばりんごの実の皮を向いて切ったあと、すぐに水につけるのは、これによって酸素の供給を抑え、この酵素反応を抑制して茶色くならないようにしているのです。さらに PPO 活性は食塩でその活性が阻害されるために、その水に食塩を加えるとさらに良いといわれています。ただし、実際には食塩が PPO 活性を生化学的な酵素活性阻害として顕著にわかるほど阻害するには、相当に濃い食塩濃度でないと明確には測定できません。しかし、そこまで食塩濃度が高くなると、りんごがしょっぱくなってしまいますから、おいしくなくなってしまいますね。
小関 良宏(東京農工大学名誉教授)
JSPPサイエンスアドバイザー
櫻井 英博
回答日:2023-08-08
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