一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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二酸化炭素だけでも発芽は可能か

質問者:   教員   すぎやま
登録番号5684   登録日:2023-07-09
 5年生で学習する植物の発芽の条件の「空気」とありますが、これは酸素も二酸化炭素も共に必要だということでしょうか。

 子どもの中から二酸化炭素だけでも発芽するんじゃないかという意見が出て、インゲンマメで実験してみたところ発芽せず、実験の方法が間違っていたのか、二酸化炭素だけでは発芽しないという結果が正しいのか分かりません。

 実験は、水上置換法のようなイメージで、水に沈めた逆さの容器に、スプレー式小型ボンベで実験用二酸化炭素をいれ、その中に水に浸した脱脂綿、インゲンマメを入れて観察しました。種は3つ準備し、いずれも発芽しませんでした。

 よろしくお願いします。
すぎやま 様

この質問コーナーをご利用いただきありがとうございます。
実験に工夫をされたようですが、この方法で「空気」・「窒素」・「酸素」を入れた場合には種子は発芽するでしょうか(註)?

小学校の教科書では、普通、発芽の条件として「水」・「空気」・「温度」の三要素が書かれているかと思います。しかし、「空気」を構成する成分に分けて考えるとすれば、この場合には、「空気」=「酸素」と理解するのが適当だと思います。

発芽の過程では、植物体の急速な成長(大量の物質の合成)が起こり、その際には大量のエネルギーが必要となります。このエネルギーの源は種子に貯蔵されている炭水化物・タンパク質・脂質などの有機化合物に含まれる化学的なエネルギーです。生物が有機化合物から効率よくエネルギーを取り出す生理過程は「呼吸」と呼ばれます。呼吸の過程では、基質の電子を最終的に受けとる分子として酸素が不可欠です(酸素呼吸の場合)。以上の理由で、発芽の進行には酸素が必要で、二酸化炭素のみの外気条件にすると発芽過程は進行しないと思います(厳密には、酸素がない条件下でも進行する生理過程・生理段階がありますが)。

(註)「酸素」の取り扱いにはご注意を!



佐藤 公行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2023-07-10