一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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生長しにくい環境でのタンポポの生長

質問者:   小学生   makoto
登録番号5699   登録日:2023-07-30
こんにちは。
夏休みの自由研究でセイヨウタンポポについて調べています。
植木鉢(プラカップ)にプラスチックの板で仕切りを作り、道端の状況を再現して栽培してみたところ、
仕切り無しで普通に栽培したものよりも発芽が遅く、根は少なかったものの、仕切りありのほうが葉の生長が速く、開花も半月ほど早くなりました。
狭いすきまのような生長しにくい環境では根が広がれないため根が少なくなると予想できるのですが、葉や花の生長が早くなるような理由があるのでしょうか。
よろしくお願いします。
makoto君

Q&Aコーナーへようこそ。歓迎いたします。面白い実験を思いつきましたね。植物種子の発芽や植物の成長は環境の状況によって大きく影響を受けます。光(明暗、光の強さ、光の波長、光に当たっている時間)、温度(高低、期間)、湿度、水分、土壌の量と栄養、空気中や土壌の汚染物質、機械的ストレス(圧ぱくなど)。makoto君は実験で「道端の状況を再現」するといっていますが、道端にもさまざまな状況があるので、具体的にどんな状況を頭に描いているのかが分かりません。調べようとしているのは、植物がせまいところで育つ、つまり、機械的に圧ぱくがあるような条件、例えば道端のコンクリートのすき間などでは成長が悪いのではないかと考えたからでしょうか。そして、実験のような栽培条件でタンポポを育ててみた。結果は予想と違っていたということですね。
まず。実験のやりかたはこれで良かったかを考えてみましょう。

*質問内容からすると野生のタンポポの種子を採取してきて、それを使ったようですが、どの種子も同じ個体(同じ1本のタンポポ)から集めたのか。そして、実験には仕切りのある鉢と、そうでない鉢のそれぞれ何個ずつまいたのでしょうか。栽培植物は人間が都合の良いように改良してきたものですから、通常どの種子も一斉に発芽できます。しかし、野生の種子は発芽の時期がバラバラです。それはいっせいに発芽してしまうと、芽生えてから大きな環境の変化にあったら全部の芽生えがいっせいに死んでしまう可能性があるからです。それでは繁殖できません。そこで、発芽の時期をずらすようになっているのだといわれてます。自然の知恵ですね。詳しいことは本Q&Aコーナーの登録番号4797, 4892 を読んでください。
 したがって、もし、実験で一個の種子だけを使っていたら、発芽の時期に差があっても不思議ではありません。植物の(特に野生の)実験をするときは、かならず個体差というものがありますから、ただ1組だけの組み合わせではなく、複数の(できるなら10組くらい)組み合わせを作って(この場合だと仕切りのある無し)栽培してみることが必要です。そして平均的にどちらが発芽が早いか、葉の成長が早いか、花が咲くのが早いかなどを比べるのです。

*使用したプラカップの大きさや、栽培土、仕切りの強度、栽培の量などがわかりませんので、適切な実験条件だったかは判断できません。植物の成長などで何かの影響を調べたい時は、その調べたいことだけが(この場合仕切りのあるなし)以外はどちらも全く同じ条件であるようにする必要があります。
 一応実験的に全ての条件には問題がないとして、書かれているような結果になったとしましょう。
植物は一般に不利な生育条件下、たとえば、悪い栄養条件、虫害、病害、不適切な気象条件、機械的な障害などのストレスに遭うと、早く花を咲かせて、種子をつくろうとします(本Q&Aコーナーの登録番号4149, 5391 を読んでください)。しきりのあるところでは、おそらく成長区域が十分でないことが機械的ストレスとなり、さっさと成長して花を咲かせてしまったのでしょう。葉の成長は早くても、立派な大きい葉はなっていなかったのではないですか。
勝見 允行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2023-07-31
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