質問者:
小学生
ゆったん
登録番号5705
登録日:2023-08-04
一年生の弟が朝顔を育てています。毎朝つぼみを数えているのですが、つぼみが全部右巻きでした。ずかんや本や、ここの前の質問で、つるは左巻きと書いてありましたが、朝顔のつぼみも右巻きの決まりなんですか?左巻きのつぼみはありますか?左巻きがあるとしたら、どんな決まりで左巻きになりますか?探したり育てたりしてみたいので知りたいです。
みんなのひろば
朝顔のつぼみに左巻きはありますか?
ゆったん様
こんにちは。日本植物生理学会の植物Q&Aコーナーに寄せられたあなたのご質問「朝顔のつぼみに左巻きはありますか?」にお答えします。
本題に入る前に、右巻きと左巻きについて考えておきましょう。アサガオのつるの巻き方に関心を持たれる方は多く、このQ&Aコーナーにも何度か質問がありました。興味深いことに、ほとんどの方がアサガオのつるは左巻きという前提で質問されています。それに対して、回答は左巻きではなく右巻きですと質問を訂正することから始まっています。これは、今まで左巻きと呼んでいたものを右巻きと言い直すことにしようとしたからです。くわしいことがQ&Aコーナーの登録番号2740(アサガオのつるの巻き方)に書かれています。簡単に解説すると、次のようになります。アサガオのつるは支柱に巻きついて螺旋をえがいて登っていき、この螺旋の巻き方は左巻きと呼ばれてきました。ネジもネジ山が螺旋をえがいていますが、ネジの螺旋は右巻きと呼ぶ決まりになっています。実は、アサガオのつるの螺旋の巻き方とネジ山の螺旋の巻き方は同じなのです。同じ巻き方なのに、アサガオは左巻き、ネジは右巻きと呼ぶのはおかしい、同じ呼び方にしたほうがよい、という考え方が出され、植物学の世界ではこの考えに賛成する声もあがってきたのです。それで、ネジの呼び方にあわせてアサガオも右巻きと呼ぶようにもなりました。しかし、この考えが一般に広がることはなく、多くの人がアサガオのつるは左巻きと考えているのだと思います。
アサガオや他のつる植物のつるの巻き方を右巻きか左巻きかと判断するのは難しいです。つるの様子を上から見るか下から見るか、上からたどるか下からたどるかで右巻きにも左巻きにもなるからです。見方のルールを決めておかないと混乱しますので、このように見ることにしましょうという提案はされています。しかし、これを言葉で表現するのは難しく、提案された言葉通りに見ようとしてもなかなか納得のいく見方ができません。そこで、私はもう少し分かりやすい見方を考えています。
できあがったつるではなく、植物がつるを巻いてゆく動きを見てみましょう。例えば、アサガオは支柱のまわりを左へ左へと回り込みながら上に登ってゆきます。簡単な表現ですがイメージしやすいと思います。左に回り込みながら伸びるつるが巻いてつくった螺旋は左回りにほかならないし、左回りとはすなわち左巻きのことです。ですから、アサガオのつるは左巻きと呼ぶのが自然なのです。これは一つの考えにすぎないので、統一的な見解を得るには議論が必要です。しかし、単に左巻き、右巻きとだけ言ってしまうと誤解を生じるのが現状ですので、とりあえず「左(または右)へ回り込みながら登ってゆくという見方をしたときの左(または右)巻き」というような表現をするとよいと思います。
さて、前置きが長くなりましたが、ご質問に対する回答に移ります。ここでは、アサガオのつるは「左へ回り込みながら登ってゆくという意味での左巻き」として話を進めます。蕾はつるとは逆巻きですから、右巻きと呼ぶことになります。
アサガオの蕾のねじれは右巻きと決まっています。左巻きの蕾はありません。生物の形や色や性質は遺伝子で決められていますが、時に遺伝子の働きが変化して、それまでとは違った形、色、性質になることがあります。特にアサガオではこのような突然変異が起こりやすいので、葉や花の形や色がいろいろなものがたくさん生まれてきました。ところが、つるや蕾の巻き方が逆になった突然変異はこれまで知られていません。不思議なことなのですが、理由がわかりません。左巻きの蕾を探してみたいということですが、ぜひ探してください。毎日アサガオを観察すればよいことですから、むずかしいことではありません。見つかれば大きな発見になります。しっかり観察する中で、他にもおもしろいことに気がつくかもしれません。
こんにちは。日本植物生理学会の植物Q&Aコーナーに寄せられたあなたのご質問「朝顔のつぼみに左巻きはありますか?」にお答えします。
本題に入る前に、右巻きと左巻きについて考えておきましょう。アサガオのつるの巻き方に関心を持たれる方は多く、このQ&Aコーナーにも何度か質問がありました。興味深いことに、ほとんどの方がアサガオのつるは左巻きという前提で質問されています。それに対して、回答は左巻きではなく右巻きですと質問を訂正することから始まっています。これは、今まで左巻きと呼んでいたものを右巻きと言い直すことにしようとしたからです。くわしいことがQ&Aコーナーの登録番号2740(アサガオのつるの巻き方)に書かれています。簡単に解説すると、次のようになります。アサガオのつるは支柱に巻きついて螺旋をえがいて登っていき、この螺旋の巻き方は左巻きと呼ばれてきました。ネジもネジ山が螺旋をえがいていますが、ネジの螺旋は右巻きと呼ぶ決まりになっています。実は、アサガオのつるの螺旋の巻き方とネジ山の螺旋の巻き方は同じなのです。同じ巻き方なのに、アサガオは左巻き、ネジは右巻きと呼ぶのはおかしい、同じ呼び方にしたほうがよい、という考え方が出され、植物学の世界ではこの考えに賛成する声もあがってきたのです。それで、ネジの呼び方にあわせてアサガオも右巻きと呼ぶようにもなりました。しかし、この考えが一般に広がることはなく、多くの人がアサガオのつるは左巻きと考えているのだと思います。
アサガオや他のつる植物のつるの巻き方を右巻きか左巻きかと判断するのは難しいです。つるの様子を上から見るか下から見るか、上からたどるか下からたどるかで右巻きにも左巻きにもなるからです。見方のルールを決めておかないと混乱しますので、このように見ることにしましょうという提案はされています。しかし、これを言葉で表現するのは難しく、提案された言葉通りに見ようとしてもなかなか納得のいく見方ができません。そこで、私はもう少し分かりやすい見方を考えています。
できあがったつるではなく、植物がつるを巻いてゆく動きを見てみましょう。例えば、アサガオは支柱のまわりを左へ左へと回り込みながら上に登ってゆきます。簡単な表現ですがイメージしやすいと思います。左に回り込みながら伸びるつるが巻いてつくった螺旋は左回りにほかならないし、左回りとはすなわち左巻きのことです。ですから、アサガオのつるは左巻きと呼ぶのが自然なのです。これは一つの考えにすぎないので、統一的な見解を得るには議論が必要です。しかし、単に左巻き、右巻きとだけ言ってしまうと誤解を生じるのが現状ですので、とりあえず「左(または右)へ回り込みながら登ってゆくという見方をしたときの左(または右)巻き」というような表現をするとよいと思います。
さて、前置きが長くなりましたが、ご質問に対する回答に移ります。ここでは、アサガオのつるは「左へ回り込みながら登ってゆくという意味での左巻き」として話を進めます。蕾はつるとは逆巻きですから、右巻きと呼ぶことになります。
アサガオの蕾のねじれは右巻きと決まっています。左巻きの蕾はありません。生物の形や色や性質は遺伝子で決められていますが、時に遺伝子の働きが変化して、それまでとは違った形、色、性質になることがあります。特にアサガオではこのような突然変異が起こりやすいので、葉や花の形や色がいろいろなものがたくさん生まれてきました。ところが、つるや蕾の巻き方が逆になった突然変異はこれまで知られていません。不思議なことなのですが、理由がわかりません。左巻きの蕾を探してみたいということですが、ぜひ探してください。毎日アサガオを観察すればよいことですから、むずかしいことではありません。見つかれば大きな発見になります。しっかり観察する中で、他にもおもしろいことに気がつくかもしれません。
竹能 清俊(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2023-08-10