一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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水草の肥料

質問者:   高校生   あこ
登録番号5716   登録日:2023-08-13
水草を育てています。資料では畑の作物のように硝酸態窒素ではなくアンモニア態窒素を主に吸収するとあります。なぜ同じ植物なのに違うのか教えてください。また吸収したアンモニア態窒素やリン酸は生育に使われると思いますが、水草の体内に蓄積してしまうこともあるのでしょうか。教えてください。
あこ 様

このコーナーへのご質問、ありがとうございました。

私は水草の専門家ではありませんが、水草の名前がかかれておりませんでしたので、一般的な回答になります。特殊な水草でなければいいのですが。

さて、高校生ということで、酸化と還元は習っていると思います。水中(田んぼもです)では還元状態、良く耕されている畑では酸化状態に傾いています。植物が使う無機態窒素は、ご質問の中でご指摘のように、酸化が最も進んでいる硝酸態窒素と、還元が最も進んでいるアンモニウム態窒素の二つが主な形態です。還元状態の水の中に、酸化が進んでいる硝酸態窒素を施肥すると、水の中の微生物の影響で、窒素ガスに変換されて、植物は使えません。逆に、酸化状態の土壌に還元が進んでいるアンモニア態窒素を施肥すると、土壌中の微生物により、硝酸化成反応により硝酸態窒素に戻されます。ですので、還元状態の水の中では、還元が進んでいるアンモニア態窒素を窒素源として施肥します。畑では、硝酸態窒素が使われます。(尿素も使われますが、土壌細菌の働きで、分解され硝酸態窒素に変換されて植物に使われます)

吸収された窒素は、勿論成育につかわれます。アンモニウムイオンとして吸収された窒素は、吸収されてすぐにグルタミンというアミノ酸に同化され、一般にはアンモニウムイオンが多量に蓄積することはありません。これは、このアンモニウムイオンが、植物の呼吸を阻害するなどの毒性を示すので、直ちに有機化する必要があるからだと、いわれています。一方で、硝酸イオンは毒性が極めて低いので、成育にまだ使われない分は、液胞などに蓄積する傾向があります(必要に応じて、液胞から外にでて、成育などに使われます)。

余談ですが、例えばサラダなどで生食する葉菜類は、多量に摂取するとヒトに硝酸イオンをたくさん摂取することになり、健康にはあまり良くない場合もあります。口腔内で硝酸が亜硝酸に還元され、亜硝酸が毒性を示すと一般には考えられています。勿論、量の問題ですので、毎食バケツに一杯葉菜を食べるようなことがない限りは大丈夫です。おひたしなど、ゆでる場合はゆで汁に硝酸は溶けますので、問題ありません。
山谷 知行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2023-08-13