一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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ビワの種を育てた時の根について

質問者:   小学生   さやこ
登録番号5733   登録日:2023-09-05
6月からビワの種を育てています。
ビワの種の殻を剥いて、乾燥しないようにぬれたクッキングペーパーでお布団のようにしてくるんで、種の底面がすこーし水に浸るくらいにして、育ててきました。
10日程たって、種の先から根が出てきて、そこから5日ほどかけて、種にもともとついていた一本線をめがけて根がくるっと伸びて、種の線にたどりつくと、めり込んでいくような感じでのびていきました。すると、種がその線で少しずつ割れはじめて、同時に割れ目から芽がでてきました。
もう一粒育てた種も、同じように、種の線を目指して根が伸びて、種に割れ目ができました。
誰も教えてないのに、ちゃんと割れ目のほうへ根が伸びていくこと、たどりついたタイミングで割れていって芽が出てくること、これは、ビワの種でしかおきないことですか?
さやこ様
 
 こんにちは。日本植物生理学会の植物Q&Aコーナーに寄せられたあなたのご質問「ビワの種を育てた時の根について」にお答えします。

 種子の中には植物体になる小さな幼植物が入っています。幼植物には子葉・幼根・幼芽があります。発芽するときは、幼根が先に伸びだし、続いて幼芽が伸びだします。幼根は下にむかって伸び、幼芽は上にむかって伸びます。どの植物の種子も基本的にはこのようにして発芽します。あなたが観察したビワの場合の特別なところは、「種にもともとついていた一本線をめがけて根がくるっと伸びて、種の線にたどりつくと、種がその線で少しずつ割れはじめて、同時に割れ目から芽がでてきました」ということです。これはどういうことなのか考えてみましょう。
 
 ビワの種子では子葉がとても大きく、種子の中はほとんどが子葉です。子葉は2つあって、重なりあっています。2つが重なったところを横から見れば、「種にもともとついていた一本線」のように見えるでしょう。発芽が進むと、2つの子葉にはさまれていた幼芽が大きくなりますので、2つの子葉の間にすき間ができます。これが「割れ目」のように見えたのでしょう。このすき間から幼芽が伸びてきます。
 
 「根は一本線(割れ目)をめがけて伸びていった」ということですが、これが不思議なことです。観察をはじめたとき、種子をどのように置きましたか?おそらく、「種の先から根が出てきて」という「種の先」が上を向くように立てて置いたのではないですか?このように置くと、「種にもともとついていた一本線」が縦方向になります。根は「種の先」からまっすぐ出てきますが、根は下にむかって伸びる性質があるので、すぐに「くるっと」下に向きをかえて伸びたのでしょう。そうすると、根が伸びる向きは「種にもともとついていた一本線」と同じ向きになります。このようなことで「割れ目のほうへ根が伸びていく」ように思えたのでしょう。もし、観察をはじめたときに「種の先」が下や横を向くような置き方をすれば、「割れ目」の向きは変わりますが、根はいつでも下に向かって伸びるので、「割れ目」の方へは伸びていかないはずです。ですから、「割れ目のほうへ根が伸びていくこと」はビワの種子でしかおきないことと言うよりは、種子の置き方によってたまたまおこった特別なことでしょう。どの植物でも言える大事なことは、根は下に向かって伸びるということです。「根がたどりついたタイミングで割れて芽が出てくること」も、種子の置き方によってたまたまおこったことということになります。
竹能 清俊(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2023-09-09
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