一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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植物に傷をつけた位置

質問者:   教員   オリマー
登録番号5734   登録日:2023-09-06
「ある木の幹に対して、地面から1mの高さに傷をつけたとする。植物の成長様式から考えて、数年後も傷の位置は1mの高さから変わらない。」という話を聞きました。植物は細胞分裂をする組織が茎頂分裂組織など限られた部分しかないから、だと思うのですが、それとは別に1つ1つの細胞が吸水をして大きさが変わることもあると思うのですが、木の幹は吸水による細胞の成長は起こらないのでしょうか?
オリマー 様

このコーナーへのご質問、ありがとうございました。

私は樹木の専門家ではありませんが、樹木の成長に関しては今コーナーの登録番号4445をはじめ、登録番号0101, 4997など詳しい解説がありますので、ご覧下さい。ご質問の内容から、大きめの樹木を想像しますが、それで宜しいでしょうか。ご指摘のように、茎頂分裂組織は一般に先端にありますので、縦方向には地上1mの位置はかわりません。
幹のほとんどはリグニンなどが集積して木質化し、基本的には死細部で構成されます。ただし、幹の最も外側の外樹皮のすぐ内側に、内樹皮あるいは師部と呼ばれる細胞群があり、根から水や養分を運ぶ(仮)道管や葉の光合成で生産された糖が師管を介して根や全体に輸送しています。この内樹皮の内側に形成層といわれる生きた細胞群があり、ここで細胞分裂がおこり、主に横方向に太くなります。この際、形成層同士が新たに作られた形成層によってつながり、外側に師部組織、内側に木部組織を作り続け、いわゆる年輪ができます。形成層の内側は木部となり、樹木の幹のほとんどは木質化した死細胞で構成されています。細胞一つ一つは、厚い二次壁が形成されて
二次肥厚して組織の強度を高めており、吸水による細胞伸長は無視できる程度だと思われます。答えになりましたでしょうか?
山谷 知行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2023-09-06
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