質問者:
会社員
のびー
登録番号5744
登録日:2023-10-02
家で育てているヒオウギから花が咲くとこから剣状の葉が出てきました。みんなのひろば
ヒオウギの花が咲くとこから剣状の葉が出てきた
のびー様
こんにちは。日本植物生理学会の植物Q&Aコーナーに寄せられたあなたのご質問「ヒオウギの花が咲くとこから剣状の葉が出てきた」にお答えします。
「花が咲くところから葉が出てきた」のは、可能性として、種子の穂発芽か、花の葉化(ようか)か、貫生(かんせい)かのどれかだろうと思います。種子は親植物から離れて地に落ちてから発芽するのが普通ですが、まれに親植物についたまま発芽してしまうことがあります(種子の穂発芽)。病原菌の感染によって花被が葉に変化してしまうこともあります(花の葉化)。また、花や花序から茎が再び伸びだして、再度花をつけたり栄養枝にもどったりすることもまれにあります(貫生)。「穂発芽」については本Q&Aコーナーの登録番号0653, 1242 などをお読みください。「葉化」については登録番号5104などに詳しい説明があります。「貫生」については登録番号3528, 3170などをご覧ください。少しわかりにくいかもしれませんが、パイナップルの実の上部に葉がたくさんついていますが、あれは花序から茎が再び伸びだしたもので、貫生の一例です。
さて、あなたの家で育てているヒオウギで花が咲くところから葉が出てきたのは何なのかを写真で読み取れる情報から考えてみます。
問題の葉はすでに何枚もあって、かなり大きくなっていますが、他の花では早いものでも種子が成熟しつつある段階ですから、これらの葉が穂発芽によると考えるには生長が早すぎます。また、これらの葉の基部に果実の残骸がありません。これらのことから、穂発芽ではないと思います。次に、花の葉化であれば、花被が葉に変化しますが、写真では葉は6枚?あるように見えますからヒオウギの花の花被数と同じなので葉化かもしれません。しかし、葉の集まりの下に花柄に相当する部分がありません。また、葉は大きさが著しく異なり、左右交互に順次上に向かって出ていますが、これらの特徴はシュート(茎と葉。枝と考えていいです)と同じです。花ならば花被は大きさがほぼ等しく、同心円上に輪状に配列します。これらのことから、これは花が葉化したものではなく、花序に再びシュートができた貫生と考えた方がよさそうです。葉化は病原菌を昆虫が媒介することで起こるので、一つの個体の中では複数の花で同時に起こりやすいものですが、この場合は1つの花でだけ起こっていることも葉化とは考えにくい理由です。もし、これが葉化ならば、この葉群自体にはこの後顕著な変化は起こらず、来年以降は同じ個体で同じ現象が多数起こるだろうと思います。一方、貫生ならば、この葉群自体がさらに葉を出して生長を続け、来年以降は同じ現象は起こらない確率が高いでしょう。しばらく観察を続けてください。
貫生は花の中にまた花ができる貫生花(登録番号0625など)の例が多いのですが、このような花序の中からシュートが出る例は確かに「すごく珍しい」です。見られたのはとても幸運だったと思います。
こんにちは。日本植物生理学会の植物Q&Aコーナーに寄せられたあなたのご質問「ヒオウギの花が咲くとこから剣状の葉が出てきた」にお答えします。
「花が咲くところから葉が出てきた」のは、可能性として、種子の穂発芽か、花の葉化(ようか)か、貫生(かんせい)かのどれかだろうと思います。種子は親植物から離れて地に落ちてから発芽するのが普通ですが、まれに親植物についたまま発芽してしまうことがあります(種子の穂発芽)。病原菌の感染によって花被が葉に変化してしまうこともあります(花の葉化)。また、花や花序から茎が再び伸びだして、再度花をつけたり栄養枝にもどったりすることもまれにあります(貫生)。「穂発芽」については本Q&Aコーナーの登録番号0653, 1242 などをお読みください。「葉化」については登録番号5104などに詳しい説明があります。「貫生」については登録番号3528, 3170などをご覧ください。少しわかりにくいかもしれませんが、パイナップルの実の上部に葉がたくさんついていますが、あれは花序から茎が再び伸びだしたもので、貫生の一例です。
さて、あなたの家で育てているヒオウギで花が咲くところから葉が出てきたのは何なのかを写真で読み取れる情報から考えてみます。
問題の葉はすでに何枚もあって、かなり大きくなっていますが、他の花では早いものでも種子が成熟しつつある段階ですから、これらの葉が穂発芽によると考えるには生長が早すぎます。また、これらの葉の基部に果実の残骸がありません。これらのことから、穂発芽ではないと思います。次に、花の葉化であれば、花被が葉に変化しますが、写真では葉は6枚?あるように見えますからヒオウギの花の花被数と同じなので葉化かもしれません。しかし、葉の集まりの下に花柄に相当する部分がありません。また、葉は大きさが著しく異なり、左右交互に順次上に向かって出ていますが、これらの特徴はシュート(茎と葉。枝と考えていいです)と同じです。花ならば花被は大きさがほぼ等しく、同心円上に輪状に配列します。これらのことから、これは花が葉化したものではなく、花序に再びシュートができた貫生と考えた方がよさそうです。葉化は病原菌を昆虫が媒介することで起こるので、一つの個体の中では複数の花で同時に起こりやすいものですが、この場合は1つの花でだけ起こっていることも葉化とは考えにくい理由です。もし、これが葉化ならば、この葉群自体にはこの後顕著な変化は起こらず、来年以降は同じ個体で同じ現象が多数起こるだろうと思います。一方、貫生ならば、この葉群自体がさらに葉を出して生長を続け、来年以降は同じ現象は起こらない確率が高いでしょう。しばらく観察を続けてください。
貫生は花の中にまた花ができる貫生花(登録番号0625など)の例が多いのですが、このような花序の中からシュートが出る例は確かに「すごく珍しい」です。見られたのはとても幸運だったと思います。
竹能 清俊(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2023-10-08