一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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イチョウの乳柱(気根)組織について

質問者:   会社員   神田 多(カンダ マサル)
登録番号0575   登録日:2006-04-10
イチョウの乳柱をカミソリで削ぐと、表皮の下に柔らかい組織が見えます。

その柔らかい組織の中に、小さな球状の粒が見え、中にゼリー状の液体が入っています。

この球状の組織は何んでしょうか、また、どのような機能を持ったものなのでしょうか。
神田さま
 みんなの広場へのご質問有難うございました。神田さんのご質問の回答を先ず形態学の専門の方にお願いしたのですが、此の面での形態学の研究はあまりなされていないとのことで、ご回答を頂くことができませんでした。そこで、イチョウのことについて非常にこだわりを持っておられる、元東京大学理学部付属植物園園長である東大教授長田敏行先生にお廻ししました所、以下のようなご回答をお寄せくださいました。参考になれば幸せです。


長田先生からのご回答
 まず、その組織が何であるかは分かりませんが、小生の知る限りのところは、以下の通りです。
1.乳柱は、俗に乳と呼ばれますが、現在気根という見方は余りなく、藤 井健次郎先生以来、茎の変形したものという考えが強いと思います。そして多分主軸 が何らかの理由で欠損したとき、それに代わって成長し、それが故にこの種が(中国に 残存し)今日に生き延びたと言うことを考えている人がおります。中国語では、樹瘤と いい英語では、Chichiといったり、Lignotuberといいます。
2.ハーバード大学のDel Trediciさんが、多少実験的な試みをしており、通常老木で見られますが、若い苗木でも見られ、茎を横にすると縦にするより多く形成され、その場所は茎の下部であることから、重力の影響があるのではと推定されております。
3."小さな球状の粒が見え、中にゼリ-状の液体が入っています。"これらについて調べられた報告を知りませんが、2.に挙げたような理由で、Del Trediciさんは、多分炭水化物の転流産物が溜まっているのではと述べています。また、その形成には葉や茎の元気の良さが関係するとも言っております。

次の文献が参考になると思います。Ginkgo biloba -A global treasure. Ed. by Hori et al. Springer (1997)のP. Del Trediciさんの章です(pp.119)。

長田 敏行(東京大学)
JSPPサイエンスアドバイザー
柴岡 弘郎
回答日:2006-04-13
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