一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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光周性(花芽形成)について

質問者:   高校生   はんぺん
登録番号5761   登録日:2023-10-17
植物には長日植物、短日植物、中性植物がありますが、これら植物はどのような経緯でこれらの光周性を持つようになったのでしょうか?

①長日植物は暗期が限界暗期より短いときに花芽形成し、短日植物は暗期が限界暗期より長い時に形成する。
②長日植物は春から初夏に結実し、短日植物は夏から初秋に結実する
③登録番号1996より「短日植物では、高緯度に分布するものほど限界暗期が短い方が花を咲かせやすく、(略)生存に有利であると考えることが出来ます。」とあり、同様に考えて「長日植物では、高緯度に分布するものほど限界暗期が長い方が花を咲かせやすく、生存に有利である。」
④参考書にて「高緯度地域には長日植物のような植物が多く生息している」
⑤登録番号0552より「花芽をつくり始める季節と実際に花を咲かせる季節が大きくずれているものがある」

私の仮説
③より短日植物も長日植物も高緯度で生育できるが、②の違いにより④のように寒冷な高緯度地域では長日植物の方が生育に有利であると考えました。しかし、それ以外地域では長日植物や短日植物の光周性をもたずとも生育できるとも考えました。また高緯度地域でも⑤のようにあるならば長日植物のような光周性をもつ必要がないと考えました。

知識が無く、大変見当違いな記述かもしれませんが回答していただきたく存じます。
よろしくお願いします。
はんぺん様

 こんにちは。日本植物生理学会の植物Q&Aコーナーに寄せられたあなたのご質問「光周性(花芽形成)について」にお答えします。
 
 光周性をもつ必要はないとお考えなのでしょうか?そのようなお考えに至った経緯や理由がお書きになった範囲ではよく分かりかません。質問文全体からの印象としては、生息地の緯度と光周性との関係について関心がおありかと推測します。この問題については、すでにご覧になった登録番号1996、登録番号0552に詳しい説明がありますので、もう一度お読み頂ければと思います。
 他家受精で種子を作って種として存続するには同じ種の間で開花期をそろえることが重要で、そのためには夜の時間(または日長時間)の季節変化を利用する光周性は理に叶った性質です。短日植物も長日植物も、種ごとに異なる限界暗期があり、それぞれの種の限界暗期と異なる緯度における異なる季節の夜の時間の長さとの関係から、その緯度におけるその季節に花を咲かせることができるかどうかが決まるわけです。これに温度条件が加わります。
 植物が進化の過程でいつ光周性を獲得したか、いつ短日植物と長日植物に分化したか、種ごとの限界暗期がどのように決定されてきたか、などは興味深い未解決の問題です。登録番号1996で紹介されているアオウキクサのように、同種内での系統間で生育地域の緯度に対応して限界暗期が異なるということは、種分化が済んだ後にそれぞれの限界暗期が決まったわけですから、限界暗期に関する遺伝子の進化は他のものより速いと考えられ、研究対象として面白いと思います。
竹能 清俊(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2023-10-23
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