一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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アルコールの生物刺激剤としての効果について

質問者:   教員   JCの母
登録番号5771   登録日:2023-10-25
エタノールが生物刺激剤として効果があることを新聞記事で知りました。ワインは生物刺激剤としての効果はありますか?エタノールではなく、もっと身近なお酒で、生物刺激剤としての効果があるものはありますか。中学生が生物刺激剤について研究するのにどんな研究ができるのか、アドバイスをお願い致します。
JCの母 様

このコーナーをご利用いただきありがとうございます。

先ずは知識の整理から始めます。「生物刺激剤(Bio-stimulants)」(本質問の場合、「植物刺激剤(Plant bio-stimulants)」)とは、「植物体に働きかけて特異的な生理活動の発現または増強を誘発するような外的な作用物質(薬剤)」を指すものと理解されます。ご指摘のように、エタノールがある種の植物の生育に刺激剤として効果あることが知られています((例)参考文献参照-インターネット上に昨年理化学研究所が行った記者発表の記事が掲載されています)。この文献に示される研究では、植物体のエタノールによる前処理が高温耐性の獲得(高温ストレスの軽減)に効果的であることが確認され、そのメカニズムが解析されています。

そこでご質問への回答ですが、上に示されるようなエタノールの効果はワイン(エタノール濃度10~15%)を用いても観察されることが期待されます。エタノールを含む身近なお酒としては焼酎(エタノール濃度20%以上)があります。しかし、これらの酒類を用いる実験において効果が見られたとしても、酒に溶けている他の成分の影響が最終的には問題として残ると思います。もしエタノールに注目されるのであれば、純粋なエタノールを薬局で購入されては如何でしょうか。

実験のやり方としては、成長のある段階(種子を含む)で刺激剤にる前処理を行い、処理後の植物の生育を観察するのが簡単ではないかと思います。なお、刺激剤の効果は植物の種類や実験条件によって大きく違って来ることが考えられますので、中学生が行う実験としては先ずは既に報告されている現象が確実に再現できるかどうかを確かめることから始めるのが良いのではないでしょうか(例えば、参考文献の研究-ただしここでは培養装置が必要かな?)。実験一般に共通することですが、対照実験(コントロール)をきちんとすることが重要だと思います。

(参考文献)Matsui A.ら(2022)Ethanol induces heat tolerance in plants by stimulating unfold protein response(論文名). Plant Molecular Biology(雑誌名) 110: 131-145(巻:ページ).
佐藤 公行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2023-10-27
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