一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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イチョウの落葉について

質問者:   中学生   澄真
登録番号5792   登録日:2023-11-22
私が通っている学校にはイチョウの木が8本程度植えてあるのですが、そのすべての木が東側から葉を落としています。西側はまだ色づききっていないものもあるのに東側からイチョウが葉を落とすのはなぜでしょうか。
澄真さん

質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。
落樹木の緑葉が秋から初冬にかけて紅葉/黄葉に変わるメカニズムについては勉強されておられると思いますが、詳しいことは本コーナーにたくさんの関連質問がありますので「紅葉」で検索してみてください。仕組みについては、登録番号1107, 3559, 5461, 5672、他にもあります。また、紅葉が一斉に起こらないことについては、登録番号1462 (紅葉のタイミング、個体差);登録番号4309 (ケヤキの紅葉);登録番号4578 (紅葉の順番について)などが参考になるでしょう。
 ここでは、紅葉について簡単に説明しておきます。秋が近づき気温が下がり、日差しもだんだん弱くなってくると葉の光合成の働きも弱まり、光合成をおこなっているクロロフィルが分解をはじめます。そうすると、クロロフィルの緑に隠れていたカロチノイド色素の黄色がめだってきます。紅葉する場合はそれと同時に赤系統の色を示すアントシアニン色素が合成されされるため、黄色は目立ちません。しかし、イチョウではアントシアニンが合成されないため、きれいな黄色を呈するのです。このように、葉の色の変化は緑色を呈するクロロフィル色素の分解が引き金になり、その分解は、上記の質問・回答でお分かりのように気温や、日照の影響を受けます。
 澄真さんの観察されたイチョウの並木では、樹の生え方が実際にどうなっているのか。例えば、周囲に他の樹が生えていて、それぞれの樹の日照条件は東が少なく西が多いというようなことになってはいないか、などわかりませんが、黄葉/落葉が東から西へと順次起きているというのは、それぞれの樹が受ける日照と温度の刺激がなんらかの理由で西高東低なっているのかもしれません。
勝見 允行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2023-12-02