一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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シクラメンの花柄に葉が付きました

質問者:   公務員   カトウ
登録番号5811   登録日:2023-12-20
シクラメンの花柄に葉が付いたものが出てきました。珍しい現象ではないかと思うのですが、発生の理由と頻度について教えてください。
カトウ様

 こんにちは。日本植物生理学会の植物Q&Aコーナーに寄せられたあなたのご質問「シクラメンの花柄に葉が付きました」にお答えします。

 このシクラメンと似たような現象がチューリップでも見られたことが本Q&Aコーナーの登録番号3044と登録番号5006で取り上げられています。そこでは花被から葉へのホメオティックな変異の可能性が考察されていますが、それで矛盾なく説明するのは難しく、易しい問題ではないとされています。このシクラメンの場合は、一見すると花の一部が葉に変化しているようではあります。しかし、花と葉の間にかなりの距離があること、花の形や大きさは他の正常な花たちと差が無いように見えること、葉は小さいものの形は正常に見えることなどから、花の一部の葉化ではないようです。本Q&Aコーナーの登録番号5021では、シクラメンの葉が二つに分かれて双頭になった例が紹介されています。花柄や花茎の先端に花が1個だけ着く種でも2花がついて双頭になることもまれにあります。これらは、葉原基や生殖茎頂が発生初期に物理的障害などで二分されて二股になったものと思われます。今回の場合は葉が2枚あるので、葉については登録番号5021の双頭と同じことが起こったのかもしれませんが、花もあるので、一つのものが三股になったわけではありません。ファイトプラズマやその他の病原菌の感染によって葉や枝が密生したり花が葉化したりすることがありますが(登録番号5070)、このシクラメンでは花も葉も形は正常なようですので、病的なものでもないようです。問題の花柄は他の花柄のどれよりも長いことが何かヒントにならないかと思いましたが、いいアイデアが浮かびません。このように、いくつかの可能性を考えてみましたが、うまく説明することができません。
 いろいろ考えているうちにハナイカダを連想しました。ハナイカダは葉の上に花が咲く不思議な植物ですが、あれは葉の主脈とその葉の腋に出来た花の花柄が発生初期に融合して一つになるために、見掛け上葉の上に花が着く形になるものです。問題のシクラメンの花柄はハナイカダのように葉柄と花柄が発生初期に融合したのかもしれません。ただし、葉が2枚あることが問題を複雑にしています。2枚の葉と花柄が融合したと仮定しなければなりません。あるいは、葉の方は1枚だったものが後で二股になったのかもしれません。いずれにしても大胆な仮説ですが、この花柄を葉より下のところで切って横断面を観察してみることをお勧めします。もし維管束が三つまたは二つあるならばこの融合仮説は正解ということになります。もし一つしかなければ残念ながら仮説というより妄想ということになります。
 このような現象は安定して発生するものではないので、何個体のうちの何個体で発生するというような数値化ができませんから、発生の頻度はわかりません。「珍しい」というような曖昧な表現しかできないのはやむをえません。
竹能 清俊(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2023-12-25
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