一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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葉が燃えると“パチパチ”?

質問者:   教員   T学園Y先生
登録番号5812   登録日:2024-01-08
https://www.facebook.com/watch/?v=573467653126684
↑こちらをご覧ください。

トベラとヒイラギの葉を燃やすとパチパチ音が鳴るのはなぜですか?
先日,子どもたちを連れ,伊勢志摩国立公園へとフィールドワークに出ました。その際にトベラという植物に出会いました。この植物を調べてみると「暖地の海岸に多く自生するが、公園や道路沿いなどにも植えられる。海岸では海浜植物などの草本につづく海岸性森林の最前線に位置し、低くて密な群集を形成する他、海岸林の中では高木層を形成する場合もある。また、潮風や乾燥に強くつやのある葉を密生することなどから、日本をはじめ欧米でも海岸の公園などの庭園樹、生け垣、また街路樹として道路の分離帯などに栽培される。」とされており(Wikipedia),素人ながら「照葉樹林や硬葉樹のようにクチクラ層が発達するのかな?」と考えました。
また「枝葉は切ると悪臭を発するため、節分にイワシの頭などとともに鬼を払う魔よけとして戸口に掲げられた風習があったことから『扉の木』とよばれ、これが転訛してトベラとなった。」ともありました。現地のガイドに尋ねてみると,「一般に節分の日には戸口にヒイラギを飾るが,伊勢や出雲ではトベラを飾る。これは両者を燃やすとパチパチ音が鳴り鬼が嫌うからとされているからです。」とおっしゃっていました。
トベラとヒイラギの葉を燃やすとパチパチ音が鳴るのはなぜなのでしょうか?これは2種のクチクラ層と関係するのでしょうか?
ご回答よろしくお願いします。
T学園Y先生

Q&Aコーナーへようこそ。歓迎いたします。薪や木材や葉が燃焼する時、破裂音を出すのは珍しいことではありません。破裂音も「パチパチ」の他に、「パチッ」とか「ポン」とかに聞こえることもあります。焚き火の時にパチパチという音がすると、心地よい暖かさを感じますね。
ご質問ではトベラとヒイラギが音を出す特別な葉のように説明されていますが、本コーナーの登録番号1865ではソヨゴとリンボクの例が取り上げられていますので、読んでください。理由も書かれています。生葉を燃やすと大なれ少なれ破裂音をたてる植物は他にもあるようです。私自身の経験ではアブラチャンとか針葉樹がそうだと思います。このような破裂は、燃焼によって温度が上昇し、存在する気体や生じた気体が膨張することによって生じる圧力で組織が破れることでおきます。気体は一般的には水蒸気です。細胞内の水分が加熱によって気化し、蒸気圧で細胞壁が破れ、蒸気は細胞間隙に広がります。この時、登録番号1865に記載されている異圧葉のように、蒸気が拡散できる場所の容積が小さいと、組織は破裂して音を生じます。この破裂は一種の小爆発のようなものです。もし葉の表面が非常に強固なクチクラ層のようなもので覆われていたら、水蒸気は葉の一番弱い他の組織を破ることになるでしょう。その時、パチパチという快音が生じるかどうかは分かりません。
焚き火などで生乾きの枝や木片を燃やすと、木材中に含まれている湿気が蒸発して水蒸気となり、同様な現象を示します。開口部があれば、勢いよく水蒸気を放出します。これも同じ原理です。破裂をもたらすガスは水蒸気の他に、テルペン系の揮発性物質や、CO2、N2などがあるようです。
勝見 允行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2024-01-10