質問者:
中学生
かえで
登録番号5813
登録日:2024-01-08
初めまして。みんなのひろば
シロツメクサの葉原基の場所
私は個人的な研究でシロツメクサで四つ葉のクローバーを作りたいと考え、その方法の一つにシロツメクサの葉原基を刺激する方法があることを知りました。
しかし、シロツメクサの葉原基の場所が分かりません。そこで皆様に次の2つのことをお教え頂きたいです。
1.シロツメクサの葉原基はどこに形成されるのか
2.種をまいてから何日程で葉原基が形成されるのか
何卒よろしくお願いします。
かえで様
こんにちは。日本植物生理学会の植物Q&Aコーナーに寄せられたあなたのご質問「シロツメクサの葉原基の場所」にお答えします。
シロツメクサに限らず、植物は一般に、茎の先端の頂端分裂組織で細胞分裂をして細胞数を増やしつつ茎を伸ばしてゆき、それと同時に先端のすぐ脇で新たな葉原基を形成して葉の数を増やしてゆきます。種子発芽からすぐに茎伸長が始まりますから、生長が続く限りいつでも葉原基は形成され続けます。シロツメクサの場合は、地面を這う枝を複数出し、それぞれの先端に頂端分裂組織があり、それらが葉原基を形成します。
以上でご質問に対する回答は済んだのですが、四葉のクローバーについて少し考えてみたいと思います。
葉原基を刺激することで四葉のクローバーを作りたいとお考えですが、確かに、踏みつけなどの刺激を与えると葉原基が傷つくなどして四葉が出来るという考えがしばしば聞かれます(本Q&Aコーナーの登録番号0624, 3938, 4282などをご覧ください)。しかし、これを実験的に示した報告はあまり無く、どのように小葉4個からなる葉になるのかは未だ見当もつかない(登録番号4587)とのことです。「踏む」と言っても、踏圧の程度によってはシロツメクサ自体に損傷を与えたり、土壌を硬くし過ぎたりして生育に悪影響を及ぼすこともあると指摘されています(登録番号4587)。踏むことで植物ホルモンのエチレン合成が高まりますが、エチレンの関与は証明されていないとのことです(登録番号4282)。どうも踏むことと四葉出現の因果関係はまだ不確かなようです。
人が頻繁に歩いて、踏まれている所に四葉が多いと言われているようです。そのような所は歩く機会が多いので目につきやすいだけかもしれません。踏まれていない所での四葉出現率との比較をしないと確かなことは言えません。このような観察だけでも大変ですが、最初にやるべきことだと思います。
一方、踏むことの効果を実験的に調べることも必要です。しかし、踏むということを定量的に行うのはとても難しいです。足で踏む代わりに、一定の重さのローラーで圧をかけることを一定のやり方で行うといいかもしれません。ただし、一定の重さ、一定のやり方を決めるには相当の試行錯誤が必要でしょう。しかし、これで対照との間で有意な差が出れば、それだけでも十分大きな成果です。
もし、踏むこと(圧をかけること)が四葉の出現率を高めているのならば、それが葉原基への刺激によるのか否かの検討に進みます。踏むこと、圧をかけることを葉原基以外への影響を排除して調べる必要があります。葉原基は顕微鏡サイズですから、これだけを刺激するのは簡単ではないでしょう。葉原基のある、または、葉原基が分化してくる茎頂部のあるあたりを狙って針などをランダムに刺して傷つけることなどが想定されますが、難しい作業です。しかも、四葉が出来たとしても、その四葉は葉原基のときに傷ついていたことを示さなければなりませんが、四葉と確認できた時には葉原基はもう無いのですから示しようがありません。
茎頂部を顕微鏡下で無菌的に切出して無菌培養すれば、正確な実験ができるでしょう。茎頂部の葉原基にはさらに小葉の原基が3つ形成されるはずですが、葉原基を傷つけるなどすれば小葉原基が4つ以上形成されることがあるかもしれません。あるいは、小葉原基の一つをメスで二分するなどすれば、四葉に育つかもしれません。しかし、相手はとても小さいですから、この手術は難しそうです。
ところで、四葉と似たような現象として、花の花弁や萼片の数が増えることがあります。例えば、ニリンソウの花では白い花弁状の萼片が5枚あるのが標準ですが、6枚、7枚あることも稀ではありません。頂端分裂組織に形成される花弁などの花器官の数は遺伝的に決まっていますが、遺伝子制御が厳密でない種では花器官数も安定しないようです(登録番号0675, 3781, 3787などをご覧ください)。シロツメクサの葉についても葉原基における小葉原基形成が遺伝子制御のもとにあるはずですが、稀に始めから小葉原基が4つ形成されることがあって、そのために四葉ができるのかもしれません。頂端分裂組織が大きいと花器官の数が標準より多くなることがあるようです。4倍体の品種であるオオシロツメクサがありますが、この品種は2倍体のシロツメクサより大きい(小花が多い)頭花を咲かせるだけでなく四葉も多いように思います。葉原基も大きくて小葉原基を4つ形成する場所的な余裕があるのかもしれません。葉原基への外的な刺激の関与しない四葉の形成です。そうであるならば、コルヒチン処理などで通常のシロツメクサを4倍体にすれば四葉が増えるかもしれません。
せっかく四葉を作ろうと意欲的になっていたところに水を差してしまったかもしれませんが、少し立ち止まって、地道であってもできるところから手をつけることと、従来とは違う見方もしてみることをお勧めします。
こんにちは。日本植物生理学会の植物Q&Aコーナーに寄せられたあなたのご質問「シロツメクサの葉原基の場所」にお答えします。
シロツメクサに限らず、植物は一般に、茎の先端の頂端分裂組織で細胞分裂をして細胞数を増やしつつ茎を伸ばしてゆき、それと同時に先端のすぐ脇で新たな葉原基を形成して葉の数を増やしてゆきます。種子発芽からすぐに茎伸長が始まりますから、生長が続く限りいつでも葉原基は形成され続けます。シロツメクサの場合は、地面を這う枝を複数出し、それぞれの先端に頂端分裂組織があり、それらが葉原基を形成します。
以上でご質問に対する回答は済んだのですが、四葉のクローバーについて少し考えてみたいと思います。
葉原基を刺激することで四葉のクローバーを作りたいとお考えですが、確かに、踏みつけなどの刺激を与えると葉原基が傷つくなどして四葉が出来るという考えがしばしば聞かれます(本Q&Aコーナーの登録番号0624, 3938, 4282などをご覧ください)。しかし、これを実験的に示した報告はあまり無く、どのように小葉4個からなる葉になるのかは未だ見当もつかない(登録番号4587)とのことです。「踏む」と言っても、踏圧の程度によってはシロツメクサ自体に損傷を与えたり、土壌を硬くし過ぎたりして生育に悪影響を及ぼすこともあると指摘されています(登録番号4587)。踏むことで植物ホルモンのエチレン合成が高まりますが、エチレンの関与は証明されていないとのことです(登録番号4282)。どうも踏むことと四葉出現の因果関係はまだ不確かなようです。
人が頻繁に歩いて、踏まれている所に四葉が多いと言われているようです。そのような所は歩く機会が多いので目につきやすいだけかもしれません。踏まれていない所での四葉出現率との比較をしないと確かなことは言えません。このような観察だけでも大変ですが、最初にやるべきことだと思います。
一方、踏むことの効果を実験的に調べることも必要です。しかし、踏むということを定量的に行うのはとても難しいです。足で踏む代わりに、一定の重さのローラーで圧をかけることを一定のやり方で行うといいかもしれません。ただし、一定の重さ、一定のやり方を決めるには相当の試行錯誤が必要でしょう。しかし、これで対照との間で有意な差が出れば、それだけでも十分大きな成果です。
もし、踏むこと(圧をかけること)が四葉の出現率を高めているのならば、それが葉原基への刺激によるのか否かの検討に進みます。踏むこと、圧をかけることを葉原基以外への影響を排除して調べる必要があります。葉原基は顕微鏡サイズですから、これだけを刺激するのは簡単ではないでしょう。葉原基のある、または、葉原基が分化してくる茎頂部のあるあたりを狙って針などをランダムに刺して傷つけることなどが想定されますが、難しい作業です。しかも、四葉が出来たとしても、その四葉は葉原基のときに傷ついていたことを示さなければなりませんが、四葉と確認できた時には葉原基はもう無いのですから示しようがありません。
茎頂部を顕微鏡下で無菌的に切出して無菌培養すれば、正確な実験ができるでしょう。茎頂部の葉原基にはさらに小葉の原基が3つ形成されるはずですが、葉原基を傷つけるなどすれば小葉原基が4つ以上形成されることがあるかもしれません。あるいは、小葉原基の一つをメスで二分するなどすれば、四葉に育つかもしれません。しかし、相手はとても小さいですから、この手術は難しそうです。
ところで、四葉と似たような現象として、花の花弁や萼片の数が増えることがあります。例えば、ニリンソウの花では白い花弁状の萼片が5枚あるのが標準ですが、6枚、7枚あることも稀ではありません。頂端分裂組織に形成される花弁などの花器官の数は遺伝的に決まっていますが、遺伝子制御が厳密でない種では花器官数も安定しないようです(登録番号0675, 3781, 3787などをご覧ください)。シロツメクサの葉についても葉原基における小葉原基形成が遺伝子制御のもとにあるはずですが、稀に始めから小葉原基が4つ形成されることがあって、そのために四葉ができるのかもしれません。頂端分裂組織が大きいと花器官の数が標準より多くなることがあるようです。4倍体の品種であるオオシロツメクサがありますが、この品種は2倍体のシロツメクサより大きい(小花が多い)頭花を咲かせるだけでなく四葉も多いように思います。葉原基も大きくて小葉原基を4つ形成する場所的な余裕があるのかもしれません。葉原基への外的な刺激の関与しない四葉の形成です。そうであるならば、コルヒチン処理などで通常のシロツメクサを4倍体にすれば四葉が増えるかもしれません。
せっかく四葉を作ろうと意欲的になっていたところに水を差してしまったかもしれませんが、少し立ち止まって、地道であってもできるところから手をつけることと、従来とは違う見方もしてみることをお勧めします。
竹能 清俊(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2024-01-15