一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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ソメイヨシノの種子について

質問者:   高校生   長谷 嵐那谷
登録番号5819   登録日:2024-01-18
授業で多様性の話をした際にソメイヨシノの話が出ました。
先生が言うにはソメイヨシノは3倍体だから種子を作らないとのことで調べてみると実際に下記リンクで見つかりました。
http://jusa.sakura.ne.jp/zukan/someyosi.html
ですが僕個人で種子を見たことがあり、実際に調べたところ姫路市のホームページや下記のページでその事例について書かれたものも拝見しました。
https://biome.co.jp/biome_blog_003/
どちらが正しいのでしょうか?
また、もし自家不和合性のために種子が作られなかったのであれば3倍体であると言う説ははどのようにして生まれたと予測できますか?
長くなりましたがお答えしていただけると幸いです。
長谷 嵐那谷様、

 こんにちは。日本植物生理学会の植物Q&Aコーナーに寄せられたあなたのご質問「ソメイヨシノの種子について」にお答えします。

 ソメイヨシノはオオシマザクラとエドヒガンの種間雑種で、親のオオシマザクラとエドヒガンはともに2n=16の2倍体、ソメイヨシノも2n=16の2倍体です。雑種であってもソメイヨシノは種子を作ることができ、種子は発芽します。しかし、実際には果実(種子)をつけることは稀なので、種子を作ることはないと思われがちです。ソメイヨシノは自家不和合性であること、観賞用に植栽されているのはどれもクローンであること、ソメイヨシノだけを一か所に多数まとめて植える場合が多いことが、結実(種子形成)が稀な理由です。自家不和合性ですから結実するには他家受粉が必要ですが、周囲に多い他個体はクローンなので、その花粉を受取っても自家受粉と同じことになり結実できません。しかし、近縁の他種が近くにあればその花粉を受取って結実することがあります。稀に見られるソメイヨシノの果実はこのようにして出来たものです。ただし、この果実の種子から発生する個体はソメイヨシノと他種の間の雑種ですから、もはやソメイヨシノではありません。以上のことは、本Q&Aコーナーの登録番号0577, 2309, 2415, 4680, 4695などに詳しい解説がありますのでご覧ください。
 
 ソメイヨシノが3倍体であるという説は聞いたことがありません。質問文中に引用されたサイトには確かにソメイヨシノは3倍体で種子ができないとありましたが、情報源が示されていないので確認できませんでした。さらに試みに生成AIへの質問をしてみたところ、3倍体であるとか、2n=24であるとかの答えが返ってきました。ところが、言葉を替えて質問を繰返すと、2倍体であるとか、自家不和合性で種子が出来ないとか、異なる答えも返ってきました。これらには情報源が示されていることもありましたが、その情報源をチェックしてみると直接関係の無いものも多く、生成AIはそれらを正しく引用しているとは思えませんでした。どうも、3倍体という話は信憑性に欠けるようです。投稿者の誤解や生成AIの誤った回答に基く記事もネット上に公開されれば、むしろ新奇な情報として拡散する可能性があります。ネット情報は無暗に信じることをせず、慎重に吟味する必要があります。学会、大学、研究所など責任の所在が明らかな情報を信頼するようにしてください。
竹能 清俊(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2024-01-22
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