一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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湿気中根と吸収しやすい水のサイズ

質問者:   高校生   あこ
登録番号5820   登録日:2024-01-18
野菜を水耕栽培すると水中根が出てくること、代表的なものがレンコンであることを知りました。またこれとは別に湿気中根というものもあることを知りました。この根はどのような環境に置かれると発生するのでしょうか。また水耕栽培のような「水の塊」と霧やミストのような「小さな水粒」では、水分吸収のしやすさに違いはあるのでしょうか。小さな粒にした方がより吸収しやすいイメージがあるのですが、簡単に実験する方法が思いつきません。教えていただければ嬉しいです。
あこ様

このコーナーへのご質問、ありがとうございました。

水中根と湿気中根に関しては、国の研究機関であります農研機構から報告がありますので、少し古い情報ですが参考にお読み下さい。(
<https://www.naro.go.jp/project/results/laboratory/vegetea/2003/vegetea03-25.html> トマト養液栽培における水中根と湿気中根の形態および窒素吸収の差異 | 農研機構 (naro.go.jp))また、論文は次のものです。(_pdf (jst.go.jp) <https://www.jstage.jst.go.jp/article/rootres1992/12/2/12_2_35/_pdf> )

根の主な役割は、一般に、土壌中に張り巡らせて地上部を支えることと、水や窒素などの栄養成分を吸収することと考えられます。上記の情報によりますと、水中根は、ご承知のように植物を水耕栽培した際に見られるものです。栄養塩を含む水で栽培しますので、積極的に表面積を増やす必要がないので、根毛の発達は少なくなります。他方、湿気中根は、栄養塩を含む水をろ紙などに含ませて植物を置いているようですので、水分や栄養成分を効率良く吸収するために根毛を含む根の発達が認められるようです。畑地で栽培される野菜の根は、通常は畑地土壌中に含まれる酸素も吸収しますが、水耕栽培の場合は酸素が不足しますので、多くの場合、金魚用のポンプなどを使って水耕液に酸素(空気でOK)の供給が必要です。もともと水中で成育できるイネやレンコンなどは、地上部から根へ酸素を供給する穴があいていますので、その必要はありません。簡単な実験は難しいのですが、同じ植物の発芽種子を、片方は空気ポンプを備えた水耕栽培の培地溶液に、他方は同じ成分を含んだろ紙上において密閉し、同じ温度で栽培比較しては如何でしょうか。上記の論文の方法が参考になるかと
思います。

さて、水や栄養成分は、根の表皮細胞から細胞間隙や細胞壁を介して輸送されるアポプラスと輸送と、細胞質内を繋ぐ原形質連絡を介して輸送されるシンプラスト輸送があります。いずれの経路を通りましても、道管や師管まで輸送される際には、疎水性高分子で構成される組織を通過する必要があり、細胞間輸送が必須になります。細胞の中に吸収される際には、細胞膜が脂質で構成されていることから特別な輸送機構が必要になり、膜を挟んだ物質の輸送には膜にある様々な種類のタンパク質を介して輸送されます。従いまして、ご質問にある「水の塊」や「小さな水粒」で水分吸収に差があるとは考えにくいかと思われます。植物細胞における物質輸送に関しては、詳しくは生物の教科書などを見てください。

水中根や湿気中根以外に、気根と言われる根が発達することもあります。気根につきましては、本コーナーの登録番号1154に詳しく説明がありますので、読んでみてください。
山谷 知行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2024-01-24
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