一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

チェックリストに保存

種子からのデンプンの取り出し方について

質問者:   中学生   Mol
登録番号5822   登録日:2024-01-22
自由研究で、発芽するまで、種子のデンプン量の推移について調べたいと思っています。
種子からデンプンを取り出す方法はあるのでしょうか?
細かく砕いてやる方法が見つかったのですが、種子でするとなると、大量に種子が必要になってくる気がしています。
他の方法で調べる方法はあるのでしょうか?
Molさん

Q&Aコーナーへようこそ。歓迎いたします。Molさんの自由研究の目的は、「種子の中の貯蔵デンプンの量は、種子の発芽に際してどのように変化していくか」を調べたいということですね。デンプンの検出と定量はヨード反応でおこなう。そしてデンプンは発芽に向かって減少していくだろうと予測している。
このように理解して説明いたします。 

 種子の貯蔵デンプンは、種子の中の胚が成長を開始し、幼植物(芽生え)となって光合成がしっかりできるようになるまでの栄養の供給源です。したがって、発芽に向かって高分子のデンプンは分解され、ブドウ糖になって胚の成長の為に使われるのです。しかし、種子はデンプン以外にタンパク質、脂肪などが栄養の貯蔵物質として含まれています。貯蔵物質として何が多く含まれるかで、デンプン種子、脂肪種子、タンパク種子と分けられます。細胞の中でこれらの物質が貯蔵される場所も別々です(登録番号0431を読んでください)。Molさんはデンプンの推移を調べるために、どの種子を使うつもりでしょうか。種子によってはデンプンの検出が簡単にできない場合もあります。ヨード反応が見られないことについての質問と回答をぜひ読んで下さい(登録番号2733,3864)。
 ご質問によると、デンプンを取り出したい(抽出したい)と考えておられるようですが、もしそうなら、種子を細かく砕いて粉末のようにしないとできません。それにデンプンを精製し、ちゃんと定量することは簡単ではありません。

 種子の中のデンプン量が減少することをおおまかに確かめるだけなら、登録番号3692に説明されているように試みてみたらよいでしょう。「お茶パック」というお茶の葉を入れてティー・バッグのようにして使う袋が売られていますが、材料種子をくだいたり、潰したりするのに利用するといいかもしれません。

 もっと簡便な方法は、インゲンなどのやや大きい種子を吸水させ、柔らかくなったら子葉を輪切りにし、切り口を双眼顕微鏡(もし学校の理科室にあれば)でみると多くの粒状のものがみえます。これはデンプン粒(デンプンは細胞の中でデンプン粒として存在しています)で、切り口にヨード試薬をふりかけ、余分の試薬を洗い流して観察すると、青色に染まっているのが見えます。染まり具合から、デンプン量の変化を推定できるでしょう。

やはり、デンプンを抽出したい時は以下のような手順でやってきて下さい。

種子からのデンプンの抽出
1 水で種子を洗う
2 種皮を取り除く
3 中身(*1)を粉末にする(*2)
4 粉末に適量の水を加えよくかきまわす
5 濾過する(*3)
6 4、5の過程を数回くりかえす。残渣(濾過の後に残ったカス)は捨てる。
7 濾液をまとめて静置しておくと、沈殿ができる
8 上澄みを捨て、沈殿に水を加えてかきまわし、再度沈殿を待つ
9 8の過程を数回くりかえす(*4)
10 沈殿の表面に色がついていたり、固形物があれば取り除く
11 乾燥する
12 デンプン抽出完了

*1:種子によって胚乳か子葉
*2:種子が大きければ、スライスして細かく切ってから砕く
*3:目の細かい布あるいは、ろし、コーヒー・フィルター・パーパー
*4:沈殿したデンプン(粒)を洗う意味がある。
勝見 允行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2024-01-24
植物 Q&A 検索
Facebook注目度ランキング
チェックリスト
前に見たQ&A
入会案内