一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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再生と成長の違いについて

質問者:   高校生   みじんこの第四形態
登録番号5833   登録日:2024-02-14
豆苗という植物がありますが、この植物は脇目付近で切ることによって、脇目の部分からもう一度生えてきます。この現象、つまり脇目からもう一度生えてくるというのは「再生」または「成長」のどちらに該当するのでしょうか?教えて頂ければ幸いです。よろしくお願いします!
みじんこの第四形態 様

Q&Aコーナーにご質問いただきありがとうございました。回答が遅れてしまい申し訳ありません。

さて、「再生」と「成長」の違いですが、高校教科書で「再生」の例として取り上げられることが多いのは、プラナリアやイモリの再生ではないかと思います。また、「再生医療」という言葉を耳にされたこともおありでしょう。これらの「再生」現象に共通するのは、一度特定の組織に分化した細胞が、何らかの刺激に応答して、再分化の過程を経て新しい組織や器官を作り出すという点にあります。

一方、植物の脇芽においては、茎、葉、茎頂などの体の基本構造やそれを構成する組織がすでに出来上がっており、腋芽の「成長」とは、そのような構造が再分化の過程を経ずに拡大していく現象と考えることができます。したがって、脇芽が大きくなる現象は、「再生」ではなく「成長」ということになります。

さて、植物は再生能力が低いのかと言えばそれは逆です。植物の「再生」の例をあげると、高校教科書で言えば、カルスからの植物体の「再生」がそれに当たりますし、挿し木などで見られる茎からの発根(不定根形成)も「再生」の一種と捉えることができます。また、特定の植物種では、葉から沢山の小さな植物体(不定芽)が「再生」されることも良く知られています。このようなことから、植物は動物よりも高い再生能力を持つと考えられ、その仕組みの解明が現在精力的に進められています。
長谷 あきら(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2024-02-26