一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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クロロフィルが緑色のみを反射する理由

質問者:   高校生   marippe
登録番号5835   登録日:2024-02-15
授業で、物質が特定の色を反射することでその色に見えるということを習いました。そこで疑問に思ったのですが、クロロフィルが緑色のみを反射するのはなぜですか。
クロロフィルが緑色を反射する分子を含むからなのかなと考えていたのですが、調べてもわからなかったです。仮にそれ正しいのならばどうしてその分子が緑色を反射する特徴を持っているのですか。
marippe様
 
みんなのひろば「植物Q&A」へようこそ。質問を歓迎します。
太陽光は、様々な波長の電磁波からなっています。電磁波は、下記の可視領域の光の他に、短波長側には紫外線、長波長側には赤外線、電波などがあります。いわゆる「白色光」は様々な波長の光(可視光)の混合物です。自然現象では虹の色から、また、実験的にはプリズムを通してみるとわかるように、「白色光」は、可視領域では長波長側から短波長側へと順に、赤、橙、黄、緑、青、藍、紫色などの色からできています。プリズムや虹では、白色光が屈折や反射を受けたとき、波長によって反射や屈折の度合いが違うので、区別された色となります。私たちの目の網膜には、色調を区別する3種類の視細胞(錐細胞と呼ばれ、もっともよく応答する波長領域が、それぞれ赤、緑、青)と、明暗を区別する視細胞(桿細胞と呼ばれ、可視領域の全波長の光に応答する)があります。ヒトは、瞳を通った光によって起こる3種の錐細胞及び桿細胞の興奮を神経を通して脳に伝え、最終的には脳が興奮の度合いを判別して、色や明暗を認識しています。なお、光を受けた時に発生する信号の強さは、同じ入射光強度で比較すると、ヒトの桿細胞では緑色に対する応答が最も強く、錐細胞が応答しない一部の赤外域や紫外域でも、桿細胞は弱いながら応答しています。
可視領域の光が3種類の錐細胞によってバランスの取れた割合で受け取られると、私たちはその光を白色(白色光)と認識します。白熱電球の発光、白い花、紙、布などに反射される光が、これに当たります。白色光のうち、ある波長域の光(例:赤色光)がある物質層によって良く吸収された場合は、吸収されにくかった波長の光(補色と呼び、この場合は緑色光)が、他の波長の光よりも高い割合で網膜に到達するので、3種類の錐細胞の応答の強さの比較から、私たちはその物質層の色を緑色だと認識します。葉の中のクロロフィルは、赤と青の光をよく吸収するので、眼に到達する光の割合は、その補色である緑色の光と橙色の光の割合が高くなり、私たちの眼の錐細胞は、緑の光に対する感度が高いので、植物の葉の色は緑色(細かく言うと、緑色に橙色が少し加わった混合色)だと認識します。若葉が薄い緑色をしているのは、緑色光の他に赤や青色などの他の波長の光も吸収される度合いが低く、これらの光も反射光や透過光として相当程度が目に届くと白みがかった色が加わるからであり、葉が成熟するにつれて緑色が濃くなるのは、赤や青などの他の波長の光は大部分がクロロフィルなどに吸収され、眼に届く光の中で緑色の光の割合が著しく高くなるためです。
櫻井 英博(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2024-02-28
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