質問者:
一般
みーちゃ
登録番号5850
登録日:2024-03-09
昨年7月、庭の日々草が開く際に捻れて咲いていくことを見つけ、知らなかったのでX(旧twitter)にポストしたのですが、昨日芝桜の花が開きそうだった為に写真を撮った際、逆方向に捻れていることに気づきポストしたものの疑問が湧きました。花が開く時の捻れ
花の種類によって花びらが捩れる方向は違うものなのか? 北半球と南半球で異なるものなのか? 同じ花でも突然捩れる方向が変わるものなのか? 全てランダムなのか?
検索で調べていましたらこちらのサイトで2017.6.16に「捻れる花」と題して学生さんが質問され、奈良先端科学技術大学院大学の橋本先生が回答されていて、モデル植物の変異の種類によって決まると述べられていますが一般的に庭に咲いている植物ではどうなのかがいまいち理解できないため、質問させていただきました。
本日ポストしたURLです https://x.com/miechas/status/1766248884299600349?s=61&t=g_HCz1tdqdwUi3AejNOv0w
みーちゃ様
こんにちは。日本植物生理学会の植物Q&Aコーナーに寄せられたあなたのご質問「花が開く時の捻れ」にお答えします。
すでにご覧になった本Q&Aコーナーの登録番号3788(捻れる花)にあるように、蕾のときに捻じれていたり、開いた後に隣り合う花弁が重なり合ったりする花があります。捩れたり、重なり合ったりする方向は植物種によって決まっていることが多いと思いますが、回答にあるように決まっていない場合もあるようです。決まっている場合の一例として、あなたも観察されたニチニチソウでは、ある花弁の左端は左隣の花弁の上側に来るように重なっており、5枚の花弁は反時計回りに配置されているように見えるとされています。ハイビスカスは時計回りで、ムクゲは両方あるとのことです。ただし、左右や時計回り・反時計回りは見方によってどちらにも取れるので注意が必要です(登録番号5705を参照してください)。
捻じれの方向は北半球と南半球で異なるものなのかというご質問ですが、このような蕾の捻じれや、蔓植物の蔓の巻きの方向は北半球と南半球で異なるのかという質問は、このQ&Aコーナーにも多数寄せられています。これは、北半球の台風の渦は反時計回り(左巻き)で、南半球のサイクロンの渦は逆の時計回り(右巻き)で、その違いにはコリオリ力の働き方がかかわっているという事実から連想される疑問だろうと思います。しかし、コリオリ力とは、例えば北極から南に向かって物体を発射すると、その物体が到着した地点は、地球が自転しているために最初の目的地よりずれるので、物体に何らかの力が働いて進行方向が曲げられたように見える、その見掛けの力のことです。コリオリ力は緯度によって自転の速度が違うことに由来するので、緯度による自転の速さの違いが大きいほど、つまり、緯度の差が大きいほど強く効果が出ます。従って、台風のような地球規模のスケールの大きな現象でこそ見られるものです。植物の生長のような小さな現象は全く影響されません。もし、仮に影響されるものであるとするならば、北半球の花の捻じれや蔓植物の蔓の巻きは全て台風の渦と同じ反時計回り(左巻き)になることになります。勿論そのようなことは無いのですから、捻じれや巻きの方向が北半球と南半球で異なるということはありません。
「同じ花でも突然捩れる方向が変わるものなのか? 全てランダムなのか?」との文言の真意が分かりにくいのですが、登録番号3788の回答文で述べられている、シロイヌナズナにおける微小管機能の変異で起こる捻じれの方向性のことでしょうか?ここで述べられているのは、ある変異では花弁などの伸長方向が右巻きに捻じれるし、別の変異では左巻きに捻じれ、またある変異ではどちらとも決まっておらず捻じれる方向はランダムだと言っています。いろいろな変異が起こるということです。
シロイヌナズナがモデル植物と呼ばれるのは、栽培しやすく変異の誘導も容易で、遺伝子解析に適した植物であり、実験材料として扱いやすいことから、植物一般を代表するモデルのような立場で研究され、その成果も植物一般に当てはめられるだろうと期待されるからです。このような理由で、「一般的に庭に咲いている植物」についての疑問もモデル植物を使った研究成果に基いて説明されることが多いのです。しかし、植物は多様ですから、モデル植物で明らかにされたことが常に他の植物でも成り立つとは限りません。花弁の重なり合いに関して言えば、シロイヌナズナではいろいろだと分かったが、ニチニチソウではそうではなく反時計回りだけだということです。
こんにちは。日本植物生理学会の植物Q&Aコーナーに寄せられたあなたのご質問「花が開く時の捻れ」にお答えします。
すでにご覧になった本Q&Aコーナーの登録番号3788(捻れる花)にあるように、蕾のときに捻じれていたり、開いた後に隣り合う花弁が重なり合ったりする花があります。捩れたり、重なり合ったりする方向は植物種によって決まっていることが多いと思いますが、回答にあるように決まっていない場合もあるようです。決まっている場合の一例として、あなたも観察されたニチニチソウでは、ある花弁の左端は左隣の花弁の上側に来るように重なっており、5枚の花弁は反時計回りに配置されているように見えるとされています。ハイビスカスは時計回りで、ムクゲは両方あるとのことです。ただし、左右や時計回り・反時計回りは見方によってどちらにも取れるので注意が必要です(登録番号5705を参照してください)。
捻じれの方向は北半球と南半球で異なるものなのかというご質問ですが、このような蕾の捻じれや、蔓植物の蔓の巻きの方向は北半球と南半球で異なるのかという質問は、このQ&Aコーナーにも多数寄せられています。これは、北半球の台風の渦は反時計回り(左巻き)で、南半球のサイクロンの渦は逆の時計回り(右巻き)で、その違いにはコリオリ力の働き方がかかわっているという事実から連想される疑問だろうと思います。しかし、コリオリ力とは、例えば北極から南に向かって物体を発射すると、その物体が到着した地点は、地球が自転しているために最初の目的地よりずれるので、物体に何らかの力が働いて進行方向が曲げられたように見える、その見掛けの力のことです。コリオリ力は緯度によって自転の速度が違うことに由来するので、緯度による自転の速さの違いが大きいほど、つまり、緯度の差が大きいほど強く効果が出ます。従って、台風のような地球規模のスケールの大きな現象でこそ見られるものです。植物の生長のような小さな現象は全く影響されません。もし、仮に影響されるものであるとするならば、北半球の花の捻じれや蔓植物の蔓の巻きは全て台風の渦と同じ反時計回り(左巻き)になることになります。勿論そのようなことは無いのですから、捻じれや巻きの方向が北半球と南半球で異なるということはありません。
「同じ花でも突然捩れる方向が変わるものなのか? 全てランダムなのか?」との文言の真意が分かりにくいのですが、登録番号3788の回答文で述べられている、シロイヌナズナにおける微小管機能の変異で起こる捻じれの方向性のことでしょうか?ここで述べられているのは、ある変異では花弁などの伸長方向が右巻きに捻じれるし、別の変異では左巻きに捻じれ、またある変異ではどちらとも決まっておらず捻じれる方向はランダムだと言っています。いろいろな変異が起こるということです。
シロイヌナズナがモデル植物と呼ばれるのは、栽培しやすく変異の誘導も容易で、遺伝子解析に適した植物であり、実験材料として扱いやすいことから、植物一般を代表するモデルのような立場で研究され、その成果も植物一般に当てはめられるだろうと期待されるからです。このような理由で、「一般的に庭に咲いている植物」についての疑問もモデル植物を使った研究成果に基いて説明されることが多いのです。しかし、植物は多様ですから、モデル植物で明らかにされたことが常に他の植物でも成り立つとは限りません。花弁の重なり合いに関して言えば、シロイヌナズナではいろいろだと分かったが、ニチニチソウではそうではなく反時計回りだけだということです。
竹能 清俊(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2024-03-13