質問者:
一般
ハナドリ子
登録番号5862
登録日:2024-03-31
こんにちは。ヤブガラシの花盤の色について質問させていただきます。専門的知識はありません。みんなのひろば
ヤブガラシを花瓶に活けておいたら真っ白な花盤が現れた
観察していたのは3年前の夏と2年前の夏で、少し前のことなのですがよろしくお願いいたします。
3年前、自然観察のブログを読んでいてヤブガラシの花のつくりや真珠体について興味を持ち、じっくり見てみようと家に持ち帰り花瓶に活けておいたら、数日後に開花したばかりの花盤が真っ白でした。
何故だろうと、素人の私が思いついたこと(日光不足、水道水、栄養不足)で、家で何度か小さな実験をしましたが、その間白い花盤は現れませんでした。採ってきてもすぐに萎れてしまうことも多々ありました。
その翌年(2年前)、また白い花盤が現れないかと活けておくと、4日後に白い花盤の花が咲きました。
観察中に花盤がピンク→オレンジ→ピンクと2回色変化したことがあり、そのことも調べてもわからず謎だったのですが、先日某ブログに、オレンジ→ピンク→オレンジ→ピンクと3回色が変わることが発見解明されたとの新聞記事の紹介がありました。正直なところ素人の私には理解し難い内容でしたが、色の変化の疑問は解決です。
ならば、白い花盤の謎も解決したく、質問させていただきます。よろしくお願いいたします。
ハナドリ子様
Q&Aコーナーヘようこそ。歓迎いたします。ご質問に対する回答は、ヤブカラシの花盤に色の変化についての研究を指導された東京大学大学院理学系研究科教授 塚谷 裕一先生にお願いして書いていただきました。色の変化のメカニズムも含めて、簡潔明快に解説して下さいましたので、お読みください。私は毎年庭のヤブカラシの駆除に苦労していますが、今年は花の観察をしてみます、これからも、植物のさまざまな現象に関心を寄せて、また面白い観察がありましあたら、Q&Aコーナーをお訪ね下さい。
【塚谷先生の回答】
こんにちは。ご質問ありがとうございます。
ヤブカラシの花を活けて観察していたら、数日後に開いた花の花盤が白かったということですね。これはご推察通り、栄養不足です。これはヤブカラシに限らず、蕾の状態から水だけで活けた場合に起きる一般的な現象で、私は小学生の頃、野山から持って帰った植物の蕾が咲き進むにつれてだんだん色が薄れていってしまい、ついに白くなってしまうことを何度も経験して、そのたび悲しくなった記憶があります。蕾の段階では花器官はふつう、最初は薄い緑色をしていますが、発達とともに次第に固有の色を蓄積します。ですので若い蕾のときから水しかない状態で置かれると、色素の合成ができずに白くなってしまうのです。
とくにヤブカラシの花盤の色はアントシアニンのピンクと黄〜橙色のカロテノイドの2つが合わさった色です。そのうちアントシアニンの色は光合成によって作られる糖分が不足するととたんに作れなくなりますし、カロテノイドもほぼ同じなので、観察されたような結果となるわけです。似たようなことは、切り花で売られているキキョウのようなものでも観察できると思います。初めから色づいている蕾は紫色の花として開花しますが、活け初めの頃緑だった蕾は、次第に大きくなりますが、結局は白く小さく咲いてしまうでしょう。このように、観察された現象は、光合成による糖分供給が途絶えて栄養不足となったため起きるものです。
なおご指摘のように日本産のヤブカラシは、オレンジからピンクへ、そしてまたオレンジになり、最後またピンクとなって散ります。この間はピンク色のアントシアニンの量はあまり大きく変化しないのですが、カロテノイドの量が大きく減ったり増えたりするのです。最初は雄しべが熟しているので、その間はカロテノイドが多く、雄しべが散るといったん減ります。そして遅れて雌しべが熟すと、それに合わせてまたカロテノイドが増えるのです。虫たちに、花粉を運んでほしいタイミングを色で示しているわけですね。
それにしてもヤブカラシの活花に成功したのは、たいへん素晴らしいと思いました。私自身、上の現象を調べるために何度かトライしましたが、ご指摘のようにヤブカラシは水揚げがとても悪く、活けても萎れてしまうことが多いからです。私の経験では、茎を切ったらすぐに切り口を濡らし、そのあと切り口を直火で焼き切ってから水に挿すと、うまく水を吸って数日成長を続けてくれるようです。ご参考になさってみてください。
Q&Aコーナーヘようこそ。歓迎いたします。ご質問に対する回答は、ヤブカラシの花盤に色の変化についての研究を指導された東京大学大学院理学系研究科教授 塚谷 裕一先生にお願いして書いていただきました。色の変化のメカニズムも含めて、簡潔明快に解説して下さいましたので、お読みください。私は毎年庭のヤブカラシの駆除に苦労していますが、今年は花の観察をしてみます、これからも、植物のさまざまな現象に関心を寄せて、また面白い観察がありましあたら、Q&Aコーナーをお訪ね下さい。
【塚谷先生の回答】
こんにちは。ご質問ありがとうございます。
ヤブカラシの花を活けて観察していたら、数日後に開いた花の花盤が白かったということですね。これはご推察通り、栄養不足です。これはヤブカラシに限らず、蕾の状態から水だけで活けた場合に起きる一般的な現象で、私は小学生の頃、野山から持って帰った植物の蕾が咲き進むにつれてだんだん色が薄れていってしまい、ついに白くなってしまうことを何度も経験して、そのたび悲しくなった記憶があります。蕾の段階では花器官はふつう、最初は薄い緑色をしていますが、発達とともに次第に固有の色を蓄積します。ですので若い蕾のときから水しかない状態で置かれると、色素の合成ができずに白くなってしまうのです。
とくにヤブカラシの花盤の色はアントシアニンのピンクと黄〜橙色のカロテノイドの2つが合わさった色です。そのうちアントシアニンの色は光合成によって作られる糖分が不足するととたんに作れなくなりますし、カロテノイドもほぼ同じなので、観察されたような結果となるわけです。似たようなことは、切り花で売られているキキョウのようなものでも観察できると思います。初めから色づいている蕾は紫色の花として開花しますが、活け初めの頃緑だった蕾は、次第に大きくなりますが、結局は白く小さく咲いてしまうでしょう。このように、観察された現象は、光合成による糖分供給が途絶えて栄養不足となったため起きるものです。
なおご指摘のように日本産のヤブカラシは、オレンジからピンクへ、そしてまたオレンジになり、最後またピンクとなって散ります。この間はピンク色のアントシアニンの量はあまり大きく変化しないのですが、カロテノイドの量が大きく減ったり増えたりするのです。最初は雄しべが熟しているので、その間はカロテノイドが多く、雄しべが散るといったん減ります。そして遅れて雌しべが熟すと、それに合わせてまたカロテノイドが増えるのです。虫たちに、花粉を運んでほしいタイミングを色で示しているわけですね。
それにしてもヤブカラシの活花に成功したのは、たいへん素晴らしいと思いました。私自身、上の現象を調べるために何度かトライしましたが、ご指摘のようにヤブカラシは水揚げがとても悪く、活けても萎れてしまうことが多いからです。私の経験では、茎を切ったらすぐに切り口を濡らし、そのあと切り口を直火で焼き切ってから水に挿すと、うまく水を吸って数日成長を続けてくれるようです。ご参考になさってみてください。
塚谷 裕一(東京大学大学院理学系研究科)
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2024-04-07
勝見 允行
回答日:2024-04-07