一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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レタスの水耕栽培

質問者:   一般   キム
登録番号5878   登録日:2024-04-23
小型の水耕栽培キットでレタスの栽培をして楽しんでいます。

 葉が3~4枚の草丈5cmほどの小さな苗を6本づつ、2グループに分けて培養しました。1つのグループは通常通り根を培養液に浸して育て、鑑賞魚飼育用の小型のエアポンプで空気を送りました。培養液は1Lなくなるごとに、同じ成分のものを補充しました。
 2つ目のグループは根を直接培養液に浸すのではなく、加湿器に使う超音波発生器を使って、根に1時間1回15分ぐらい噴霧し、噴霧されていない時は根は空気中にむきだしです。なお、温度と光環境は同じです。
 その結果、噴霧した方は養水分をあまり吸えないはずなのに、水耕栽培よりも葉も茎も伸びています。水耕栽培に比べると葉の厚さが若干薄いように感じますが色は変わりません。
 この様に成長に違いが出る原因は、噴霧培養の場合は根が空気中にあるので酸素をたくさん吸えることでしょうか。このような根のおかれている環境で生育がかわるものなのでしょうか。不思議なので考えられる理由をおしえてください。なお、インゲンも同じようにそだてているのですが、こちらも葉があきらかに大きくなっています。
キム様

Q&Aコーナーへようこそ。歓迎いたします。ご自宅で最近商業的にも増えている噴霧耕栽培(aeroponics)に挑んでおられるとのこと、素晴らしい試みです。噴霧耕栽培も水耕の一種ですが、普通の水耕法に比べて、商業的にはスペースをあまりとらない、給水効率が良い、給肥の節約ができる、清潔で病原フリーの栽培ができる、より正確な栽培コントロールができる。そして、成長が早くなって、収量も上がる、などのメリットがあるといわれています。

植物の地上部(茎、葉など)がよく成長するには根系の成長が良くなければいけません。植物が成長のために必要な物質は、光合成に必要な材料のCO2と呼吸のためのO2以外はすべて根から供給されます。つまり、根が周囲の土壌から吸収しなければいけません。勿論酸素も吸収します。したがって根がどれだけ成長するかは植物全体にとって極めて重要なことです。しかし、成長といってもただ主根がやたらに伸びるだけではなくて、側根が増え、したがって根毛も増えることが大切です。つまり、根系の表面積の増加が重要なのです。根系の成長がよければ、地上部への水分やミネラルの供給も増えることになります。

Aeroponics では根系の成長が促される様ようです。側根の数も根毛(吸収は主としてここでおこなわれる)の数も増えます。収量の増加につながることになります。水耕では気曝してやらないと、根が吸収できる培養液中の酸素の量が足りなくなります。しかし、aeroponicsでは根の周囲の水分と空気の量が適度に高く保たれているので、呼吸も吸水も、したがって養分の吸収も、よく行われていると言っていいでしょう。
しかし、噴霧の液滴のサイズは重要な様です。あまり大きすぎると、根への酸素の供給が制限されますし、逆に超音波でつくる霧のようにあまり細かすぎると、根毛が成長しすぎて、側根の分化が抑えられるようです。

以上のことから判断すると、キム様の場合は根への酸素供給が十分であったことで、ある程度根の成長が良く、それによって葉条の成長に差がでたのではないかと想像します。
勝見 允行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2024-05-02