一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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植物の塩耐性にカルシウムが与える影響

質問者:   高校生   きま
登録番号5879   登録日:2024-04-23
こんにちは。
現在植物の塩耐性について興味を持ち、質問させていただきました。

塩耐性の調査とともにその除塩方法について調べると、「石灰を加える」ことによって「土壌の中にあるナトリウムに代わって石灰に含まれているカルシウムが結合し、除塩に繋がる」とありました。

その一方で、過剰なカルシウムの添加は逆に植物に悪影響を及ぼすのではないかと考え、塩害時における適切なカルシウム添加量を調べる実験を行おうとしています。

しかし、登録番号0704の質問に対する回答には
「土壌をふわふわにすることで効果を成す」というように書かれています。

これらを踏まえると、石灰の中に含まれるカルシウムのみに着目して研究を行う場合、溶液濃度を調整しやすい脱脂綿を用いた栽培方法(発芽込み)では効果は出ないのでしょうか。
そうすると、他に効果的な実験方法はありますでしょうか。

よろしくお願いいたします。
きま 様

本コーナーへのご質問、ありがとうございました。

除塩に石灰を加えると良いのは、土壌に結合していたNaがCaと置き換わり、水に流されやすくなるという理解で間違いないと思われます。農水省の研究者からの論文がありますので、参考にしてみて下さい。
<https://www.maff.go.jp/j/press/nousin/sekkei/pdf/110624-01.pdf>
<5461726F2D816995CA93598250816A945F926E82CC8F9C8996837D836A8385>(maff.go.jp)

あくまでも、土壌中での動きですので、塩害時における適切なCa添加量を調べる実験を、脱脂綿を用いて試すのは、はたして思ったような成果が得られるかどうか、疑問です。できれば、DIYのような園芸資材を売っている所から、園芸用の培土とか、バーミュライト等を購入して使ってみては如何でしょうか?Caは、植物にとって必須の元素であり、濃度が高くてもそれほど過剰の害は他の元素よりもでにくいと思われます。土壌の影響を除くために、脱脂綿や水耕法でNaとCa濃度を段階的に変えて、成育を見てみるのも参考の実験になると思います。この場合は、Ca添加の効果がでない可能性もありますね。

なお、植物に吸収されたCaの多くは、細胞壁を構成しているペクチン(可溶性多糖です)と結合しています。余談ですが、畑地に石灰を加えるのは、窒素施肥や有機物投入によって進む土壌中の酸性化を防ぐためです。
実験の成功をお祈り致します。
山谷 知行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2024-04-26
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