質問者:
会社員
たっちゃん
登録番号5888
登録日:2024-05-09
暖地で地植えやポットで多肉植物を育てて楽しんでいます。みんなのひろば
多肉植物が夏でも紅葉し続ける理由
低い気温になったら赤や紫、ピンク色に紅葉するのですが、
中には(特に地植えのもの)夏も一年中
色が落ちずに成長している株がいくつかあります。
もし意図的に夏でも色が出せたら、
可愛いのでこのような個体をたくさん育てていきたいです。
紅葉の色が定着しているのでしょうか?
全体的に古い株に起きるような気がしているのですが、株の熟成と紅葉は関係ありますか?
ご回答お待ちしています。
たっちゃん様
Q&Aコーナーへようこそ。歓迎いたします。園芸的な、特に多肉植物の栽培という観点からは専門領域から外れておりますのでお答えできませんが、植物の紅葉という一般的な観点で説明いたします。
多肉植物の植物としての基本的な生理活動は他の植物と原則的に共通です。葉にはクロロフィルが含まれ、光合成によって生命維持、成長などに必要な栄養とエネルギーを賄っています。したがって、葉はふつう緑色を程します。しかし、葉に含まれる色素はクロロフィル以外にカロテン類(黄色〜赤みがかったオレンジ色)とアントシアニン(赤、紫、赤紫)などがあります。クロロフィルとカロテン類は細胞内の葉緑体という細胞小器官にありますが、アントシアニンは主として葉の表皮細胞で合成され、液胞に蓄積されます。葉が緑色に見える場合はクロロフィルの量が多くて、他の色素の量が少ないので、他の色は隠されてしまっています。カロテン類の色素は常時葉緑体の中にあって、クロロフィルによる光合成の働きを援助していますが、アントシアニンは通常は秋になり、気温が低下して、新しいクロロフィル合成も止まり、分解が始まると、合成が開始されます。一般の落葉樹の多くで見られる紅葉ははこの現象です。本コーナーでは紅葉に関しては多くの質問が寄せられていますので、ここでは詳しいことには言及いたしません。「紅葉」、「アントシアニン」などの語句で検索してください。
多肉植物の葉が気温の低下によって色づくのは、基本的に普通の紅葉と同じ原理です。しかし、多肉植物の葉は紅葉しても通常落葉しません。これは葉に多量の水分と栄養が保留されているため、葉の組織の細胞は光合成活性が低下しても、すぐには死んでしまわないからだと思われます。気温の低い時期をやり過ごし、暖かくなるとクロロフィルの合成が再開され、葉はまた緑に戻ります。
色づいた多肉植物の鑑賞家は多いようで、すでにご存知かもしれませんが、ある米国の多肉植物栽培の指導説明によると、人為的に多肉植物の葉を紅葉させるには、気温の差が15℃以上あること、水分の供給が制限されること、強光のもとに置くこと、窒素、リン、マグネシュウムの肥料を与えないことだと書かれています。
さて、ご質問にある一年中色がついたままの多肉植物のことですが、確かにそういう種類はかなりたくさん作出されていて、販売もされているようですね。普通の植物でも常時赤色や黄色をした葉のものがあるのは特に珍しいことではありませんね。アントシアニンは赤シソの葉のように、気温に関係なく合成されることもあります。しかし、この場合もクロロフィルは存在していますが、表皮のアントシアニンの色で緑色は隠されているだけです。
多肉植物と一概に言っても多くの種類がありますし、栽培品種も多いので、何を育てておられるのか分かりませんが、常時色づいた葉を持つ個体を育てたいなら、そういう品種を求められたらいいでしょう。普通の様式で紅葉した葉は前述のように、また緑色に戻りますが、個体の生理条件によってはそれが中途半端な状況のものがあってもおかしくはないと思います。特に地植えの栽培の場合は、環境条件や栄養条件は一様ではないので、そういう現象が起こりうるのかもしれません。
「紅葉の色が定着」しているという意味がはっきり分かりませんが、紅葉の色素(アントシアニンだと思われます)が分解されないで残っているということは考えられます。植物にとって生育環境が整っており、濃い緑で光合成も活発であれば成長も盛んでしょう。しかし、紅葉した多肉植物は、成長という観点からは、言ってみれば一休みしている様な感じです。気温が高くなっても紅葉色が残っているのは、完全に活力が回復していないのではないでしょうか。その意味では「古株」に起きるというのはありうることだと思います。地植えの古株に十分の肥料と水分を供給し、強い日光のもとで育てたらどうなるか試して見てください。
Q&Aコーナーへようこそ。歓迎いたします。園芸的な、特に多肉植物の栽培という観点からは専門領域から外れておりますのでお答えできませんが、植物の紅葉という一般的な観点で説明いたします。
多肉植物の植物としての基本的な生理活動は他の植物と原則的に共通です。葉にはクロロフィルが含まれ、光合成によって生命維持、成長などに必要な栄養とエネルギーを賄っています。したがって、葉はふつう緑色を程します。しかし、葉に含まれる色素はクロロフィル以外にカロテン類(黄色〜赤みがかったオレンジ色)とアントシアニン(赤、紫、赤紫)などがあります。クロロフィルとカロテン類は細胞内の葉緑体という細胞小器官にありますが、アントシアニンは主として葉の表皮細胞で合成され、液胞に蓄積されます。葉が緑色に見える場合はクロロフィルの量が多くて、他の色素の量が少ないので、他の色は隠されてしまっています。カロテン類の色素は常時葉緑体の中にあって、クロロフィルによる光合成の働きを援助していますが、アントシアニンは通常は秋になり、気温が低下して、新しいクロロフィル合成も止まり、分解が始まると、合成が開始されます。一般の落葉樹の多くで見られる紅葉ははこの現象です。本コーナーでは紅葉に関しては多くの質問が寄せられていますので、ここでは詳しいことには言及いたしません。「紅葉」、「アントシアニン」などの語句で検索してください。
多肉植物の葉が気温の低下によって色づくのは、基本的に普通の紅葉と同じ原理です。しかし、多肉植物の葉は紅葉しても通常落葉しません。これは葉に多量の水分と栄養が保留されているため、葉の組織の細胞は光合成活性が低下しても、すぐには死んでしまわないからだと思われます。気温の低い時期をやり過ごし、暖かくなるとクロロフィルの合成が再開され、葉はまた緑に戻ります。
色づいた多肉植物の鑑賞家は多いようで、すでにご存知かもしれませんが、ある米国の多肉植物栽培の指導説明によると、人為的に多肉植物の葉を紅葉させるには、気温の差が15℃以上あること、水分の供給が制限されること、強光のもとに置くこと、窒素、リン、マグネシュウムの肥料を与えないことだと書かれています。
さて、ご質問にある一年中色がついたままの多肉植物のことですが、確かにそういう種類はかなりたくさん作出されていて、販売もされているようですね。普通の植物でも常時赤色や黄色をした葉のものがあるのは特に珍しいことではありませんね。アントシアニンは赤シソの葉のように、気温に関係なく合成されることもあります。しかし、この場合もクロロフィルは存在していますが、表皮のアントシアニンの色で緑色は隠されているだけです。
多肉植物と一概に言っても多くの種類がありますし、栽培品種も多いので、何を育てておられるのか分かりませんが、常時色づいた葉を持つ個体を育てたいなら、そういう品種を求められたらいいでしょう。普通の様式で紅葉した葉は前述のように、また緑色に戻りますが、個体の生理条件によってはそれが中途半端な状況のものがあってもおかしくはないと思います。特に地植えの栽培の場合は、環境条件や栄養条件は一様ではないので、そういう現象が起こりうるのかもしれません。
「紅葉の色が定着」しているという意味がはっきり分かりませんが、紅葉の色素(アントシアニンだと思われます)が分解されないで残っているということは考えられます。植物にとって生育環境が整っており、濃い緑で光合成も活発であれば成長も盛んでしょう。しかし、紅葉した多肉植物は、成長という観点からは、言ってみれば一休みしている様な感じです。気温が高くなっても紅葉色が残っているのは、完全に活力が回復していないのではないでしょうか。その意味では「古株」に起きるというのはありうることだと思います。地植えの古株に十分の肥料と水分を供給し、強い日光のもとで育てたらどうなるか試して見てください。
勝見 允行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2024-05-19