質問者:
その他
ごんずい
登録番号5903
登録日:2024-05-27
植物(樹木)に興味を持っています。みんなのひろば
植物(樹木)分布の認定
質問です。
図鑑で分布の確定をされますが、これを決める機関はどこでしょうか。さらに分布外の樹木を複数発見した場合、どこで認定を受けることになりましょうか。
ゴンズイさま
回答が大変遅くなり、申し訳ありません。これは私が自身で回答できずにぐずぐずしていたためです。お詫びいたします。
今回は、私も大変頼りにしている日本の樹木の分布図(ルルベデータベースに基づく植物分布図)を作ってこられた、森林総合研究所の松井哲哉博士、田中信行博士(現所属は環境コンサルタントENVI)に回答をお願いしました。
【松井先生、田中先生のご回答】
1. 図鑑で分布の確定をされますが、これを決める機関はどこでしょうか。
生物の分布を公式に認める機関は存在しません。分布を表現するには分布図が最適ですが、対象生物、範囲(全国や県など)や空間解像度(約10 ㎞や20 ㎞のメッシュなど)でさまざまな分布図が専門家によって作られてきました。分布図はどうやって作られるかというと、図の執筆者は、過去の文献(書籍、論文、図鑑、調査報告書)や標本情報(博物館、植物園、インターネットの標本データベース)などから対象種の分布情報を収集し、分布データを精査して紙地図またはGISを用いて地図化します。分布図が公表されることで、分布情報が書籍や報道で利用されていきます。
たとえば、森林総合研究所では、文献やオリジナルの植生調査データを集めて作られたデータベース(PRDB)から分布地点情報が抽出され、樹木の分布図が作成されています。自然分布図ですので、植栽の地点はできるだけ除かれています。分布図はウェブサイトで公開されています。対象範囲は日本全国、水平空間解像度は約10 ㎞メッシュ、垂直空間解像度は100 mです。
また、日本樹木誌では、重要な樹種について分布図が公表されています。ここではPRDBだけでなく他の文献の分布情報も重ね合わせて元図が作られ、各地域の専門家に問い合わせが行われて元図が修正され、より精度の高い分布図が作成されました。対象範囲は日本全国、水平空間解像度は約10 ㎞メッシュです。
2. さらに分布外の樹木を複数発見した場合、どこで認定を受けることになりましょうか。
この場合、その分布外の樹木が植栽でないという前提でお答えします。分布外に発見された樹木といっても、三通りあるかと思います。1:もともとその地域に昔から自生していたけれどもこれまでは専門家に知られていなかった。2:自然分布地の樹木の種子が鳥や風によって遠方に運ばれて、分布地外に定着したものを発見した。3:庭や公園などに植栽された樹木が成長し、その種子が鳥や風によって運ばれて自然環境下で定着したものを発見した。いずれの場合でも、これまで未発見だった新産地かもしれないと思ったら、地元の植物同好会、博物館、植物園などに相談するのがよいと思います。専門家はそれなりの知識と経験を有していますし、どのような文献を調べればよいのかという情報も持っているはずです。
認定ではありませんが、新分布が報告書や論文で公表されることで広く知られることになります。専門家に評価されれば、将来作成される分布図に取り入れられるかもしれません。ただし、絶滅危惧種や希少種の場合は、その保護のために詳細な分布地は公表できない場合が多いです。
参考:
PRDB:植物社会学ルルベデータベース https://www.ffpri.affrc.go.jp/labs/prdb/index.html
日本樹木誌1・2巻(日本林業調査会)https://www.j-fic.com/bd/search/genre1/ippan/
サイエンスミュージアムネット(S-Net)https://science-net.kahaku.go.jp/
回答が大変遅くなり、申し訳ありません。これは私が自身で回答できずにぐずぐずしていたためです。お詫びいたします。
今回は、私も大変頼りにしている日本の樹木の分布図(ルルベデータベースに基づく植物分布図)を作ってこられた、森林総合研究所の松井哲哉博士、田中信行博士(現所属は環境コンサルタントENVI)に回答をお願いしました。
【松井先生、田中先生のご回答】
1. 図鑑で分布の確定をされますが、これを決める機関はどこでしょうか。
生物の分布を公式に認める機関は存在しません。分布を表現するには分布図が最適ですが、対象生物、範囲(全国や県など)や空間解像度(約10 ㎞や20 ㎞のメッシュなど)でさまざまな分布図が専門家によって作られてきました。分布図はどうやって作られるかというと、図の執筆者は、過去の文献(書籍、論文、図鑑、調査報告書)や標本情報(博物館、植物園、インターネットの標本データベース)などから対象種の分布情報を収集し、分布データを精査して紙地図またはGISを用いて地図化します。分布図が公表されることで、分布情報が書籍や報道で利用されていきます。
たとえば、森林総合研究所では、文献やオリジナルの植生調査データを集めて作られたデータベース(PRDB)から分布地点情報が抽出され、樹木の分布図が作成されています。自然分布図ですので、植栽の地点はできるだけ除かれています。分布図はウェブサイトで公開されています。対象範囲は日本全国、水平空間解像度は約10 ㎞メッシュ、垂直空間解像度は100 mです。
また、日本樹木誌では、重要な樹種について分布図が公表されています。ここではPRDBだけでなく他の文献の分布情報も重ね合わせて元図が作られ、各地域の専門家に問い合わせが行われて元図が修正され、より精度の高い分布図が作成されました。対象範囲は日本全国、水平空間解像度は約10 ㎞メッシュです。
2. さらに分布外の樹木を複数発見した場合、どこで認定を受けることになりましょうか。
この場合、その分布外の樹木が植栽でないという前提でお答えします。分布外に発見された樹木といっても、三通りあるかと思います。1:もともとその地域に昔から自生していたけれどもこれまでは専門家に知られていなかった。2:自然分布地の樹木の種子が鳥や風によって遠方に運ばれて、分布地外に定着したものを発見した。3:庭や公園などに植栽された樹木が成長し、その種子が鳥や風によって運ばれて自然環境下で定着したものを発見した。いずれの場合でも、これまで未発見だった新産地かもしれないと思ったら、地元の植物同好会、博物館、植物園などに相談するのがよいと思います。専門家はそれなりの知識と経験を有していますし、どのような文献を調べればよいのかという情報も持っているはずです。
認定ではありませんが、新分布が報告書や論文で公表されることで広く知られることになります。専門家に評価されれば、将来作成される分布図に取り入れられるかもしれません。ただし、絶滅危惧種や希少種の場合は、その保護のために詳細な分布地は公表できない場合が多いです。
参考:
PRDB:植物社会学ルルベデータベース https://www.ffpri.affrc.go.jp/labs/prdb/index.html
日本樹木誌1・2巻(日本林業調査会)https://www.j-fic.com/bd/search/genre1/ippan/
サイエンスミュージアムネット(S-Net)https://science-net.kahaku.go.jp/
松井 哲哉/田中 信行(森林総合研究所/環境コンサルタントENVI)
JSPPサイエンスアドバイザー
寺島 一郎
回答日:2024-07-03
寺島 一郎
回答日:2024-07-03