一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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どうやってナスはしましまになるの?

質問者:   自営業   あー
登録番号5918   登録日:2024-06-11
こんにちは。
農家としてナスを育てています。

ナスには一般に売られている黒紫色のナスの他に緑色のナスや紫色と白色のしましまになるようなナスなど約200種あると農家になって知りました。

そこで感じるのはしましまの縞模様がどのような経過を経て縦縞の入った模様になるのかということです。

わたしとしては、紫色の部分はアントシアニンなのかな?と思い込んでいるのですがそれはどうなのでしょうか?

仮に紫色の部分がアントシアニンであるとするならばどのような過程を経てしましま模様になるのでしょうか。

教えていただけると畑に出るのがまた楽しくなります。
あー様

 興味深いご質問ありがとうございます。回答が遅れたことをおわびします。ナスは私が好きな野菜の一つです。ナスを育ててくださりありがとうございます。縞模様のナスを見たことが無かったので少し調べてみましたが、確かに縦じまの品種が色々あるようですね。勉強になりました。

まずはナスの果皮の色についてですが、これはアントシアニンで間違いないです。縞模様については、農業・食品産業技術総合研究機構でナス科の野菜の育種や栽培法について研究をされている大山暁男先生にお話を伺いました。大山先生は、ナスの縞模様に関する論文も発表されています。

大山先生の回答を要約すると、1)ナスの縞模様が遺伝することは分かっている。2)まだ遺伝子の具体的な解析が進んでいないので、残念ながらどのような仕組みで縞ができるかは分かっていない、とのことでした。また、3)緑や白いナスではアントシアニンは検出できないそうです。

さて、植物の花や葉に模様が出る例は「斑入り」として様々知られており、「植物Q&A」でも多くの質問が寄せられているので、ご興味があれば「斑入り」というキーワードで検索されると良いと思います。

「斑入り」が出る仕組みについては、例えばアサガオの花について詳しい研究が行われ、トランスポゾンというものが関わることが明らかになっています。他の花でも同様のことが起きている可能性は高いですが、全ての例で証明されているわけでは無いようです。「植物Q&A」で「トランスポゾン」というキーワードで検索されると、色々な例や説明が出てきます。

一方、葉の「斑入り」についても様々な研究が行われています。「植物Q&A」の登録番号0235に詳しい解説が載っておりますので、ご興味があればご覧ください。そこにも書かれておりますが、葉の「斑入り」の場合はトランスポゾンによる例は少なく、むしろ、葉緑体の機能に問題が生じるような突然変異が起こることで、班(ふ)ができやすくなる例が多いようです。

さて、ナスに話を戻しますが、花の斑入りではアントシアニンが関わる例が多いこともあり、大山先生にナスの実の縞模様もトランスポゾンによるのでしょうか?とお聞きしたところ、その可能性はあるが、他の可能性も考えられる、とのことでした。ナスの実に縞模様が出る具体的な仕組みを明らかにするにはまだまだ研究が必要なようです。

そろそろナスも旬を迎える頃かと思います。縦じまのナス、見つけたら、ぜひ試食してみたいと思います。縞模様ができる仕組みについては、はっきりお答えはできませんでしたが、がっかりされることなくおいしいナスを沢山作っていただければうれしいです。
長谷 あきら(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2024-06-20