質問者:
会社員
なまけもの
登録番号5920
登録日:2024-06-13
ふと空を見上げたら、入道雲が広葉樹の樹冠の様なこんもりとした形をしていました。樹と雲の形
樹と雲の成長過程には何か共通したものがあるのでしょうか?それとも偶然でしょうか?
不思議に思ったので質問させていただきました。
なまけもの様
Q&Aコーナーへようこそ。歓迎いたします。大変ロマンティックな想像ですね。メルヘンの世界を思い浮かべました。
さて、回答は「何も関係ありません」ということです。樹冠の形と雲の形が似ているのはたまたまその様に見えるだけのことで、雲は状況によってさまざま形状を呈します。サバ雲も魚の鯖の模様の出来方と同じメカニズムでできる訳ではありません。
樹形の出来方を植物学的に説明いたします。植物は草本も木本も基本的に同じ体制をしています。地上部は主軸(幹、茎)と副軸(枝)、地下部は主根と支(側)根から成っています。どの軸も先端は分裂組織で、細胞分裂によって新しい細胞がつくられます。茎、幹の先端は茎頂、根の先端は根端といいます。したがって、植物の地上部の成長(伸長)は茎頂でおこなわれてます。茎頂はドーム状になっていて、先端から少し下がったところで将来葉となる葉原基が形成されます。
原基が作られる場所は植物種ごとに決まっていて、規則性があります。(フィボナッチの法則を読んでください。登録番号1802, 5074)茎が伸びていくと葉原基は葉になり、葉柄の茎への付け根のところに側芽が形成されます。これが枝になるので、枝にも茎頂があり、主軸と同じことが繰り返されます。こうして、植物は体制を作り上げていきます。したがって、植物の基本体制は遺伝的に決められています。一般の植物の成長にとって重要なことは、太陽光を十分に得て光合成ができることです。前述の葉の配列の仕方も、それぞれの葉が最大に太陽光を受けられる様になっています(登録番号1700, 1703, 1725 参照)。 しかし、植物は生育を始めた場所から移動できないので、成長はその場所のさまざまな環境要因の影響下におかれます。単に気候条件だけでなく、土壌、他の植物との共存、動物、昆虫、菌類、病原菌などの生物的要因、物理的な障害も無視できません。これらの環境下で植物は体制を最適化しようと形を整えていきます。もちろん、素早くできることではありませんので、体制を整えようとしている時に生育状況が悪くなれば、対応の仕方にも影響があり、結局たえず形を変えざるを得ないこともおこります。
なまけものさんが観られた樹冠の形状は偶然にできるものではなく、いわば植物の適応体制であるともいえましょう。
他方、雲は上昇気流という下方から上方への空気の流れ、つまり上に向かう風でつくられます。水蒸気を含んだ空気が上方へ移動すると、気温の低下のために水滴となり、それが雲を形成します。反対に気流が下方に向かう、つまり風が下向きになるとと雲はなくなることになります。このように、雲はいわば、風の向きで、できたり消えたりしているので、形も変わるように見えます。もし、こじつけていえば、植物も風の影響を受けるということで共通点があるのかもしれませんが、その影響は本質的に異なっていることはお分かりかと思います。
Q&Aコーナーへようこそ。歓迎いたします。大変ロマンティックな想像ですね。メルヘンの世界を思い浮かべました。
さて、回答は「何も関係ありません」ということです。樹冠の形と雲の形が似ているのはたまたまその様に見えるだけのことで、雲は状況によってさまざま形状を呈します。サバ雲も魚の鯖の模様の出来方と同じメカニズムでできる訳ではありません。
樹形の出来方を植物学的に説明いたします。植物は草本も木本も基本的に同じ体制をしています。地上部は主軸(幹、茎)と副軸(枝)、地下部は主根と支(側)根から成っています。どの軸も先端は分裂組織で、細胞分裂によって新しい細胞がつくられます。茎、幹の先端は茎頂、根の先端は根端といいます。したがって、植物の地上部の成長(伸長)は茎頂でおこなわれてます。茎頂はドーム状になっていて、先端から少し下がったところで将来葉となる葉原基が形成されます。
原基が作られる場所は植物種ごとに決まっていて、規則性があります。(フィボナッチの法則を読んでください。登録番号1802, 5074)茎が伸びていくと葉原基は葉になり、葉柄の茎への付け根のところに側芽が形成されます。これが枝になるので、枝にも茎頂があり、主軸と同じことが繰り返されます。こうして、植物は体制を作り上げていきます。したがって、植物の基本体制は遺伝的に決められています。一般の植物の成長にとって重要なことは、太陽光を十分に得て光合成ができることです。前述の葉の配列の仕方も、それぞれの葉が最大に太陽光を受けられる様になっています(登録番号1700, 1703, 1725 参照)。 しかし、植物は生育を始めた場所から移動できないので、成長はその場所のさまざまな環境要因の影響下におかれます。単に気候条件だけでなく、土壌、他の植物との共存、動物、昆虫、菌類、病原菌などの生物的要因、物理的な障害も無視できません。これらの環境下で植物は体制を最適化しようと形を整えていきます。もちろん、素早くできることではありませんので、体制を整えようとしている時に生育状況が悪くなれば、対応の仕方にも影響があり、結局たえず形を変えざるを得ないこともおこります。
なまけものさんが観られた樹冠の形状は偶然にできるものではなく、いわば植物の適応体制であるともいえましょう。
他方、雲は上昇気流という下方から上方への空気の流れ、つまり上に向かう風でつくられます。水蒸気を含んだ空気が上方へ移動すると、気温の低下のために水滴となり、それが雲を形成します。反対に気流が下方に向かう、つまり風が下向きになるとと雲はなくなることになります。このように、雲はいわば、風の向きで、できたり消えたりしているので、形も変わるように見えます。もし、こじつけていえば、植物も風の影響を受けるということで共通点があるのかもしれませんが、その影響は本質的に異なっていることはお分かりかと思います。
勝見 允行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2024-06-17