一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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パールアカシアの木に、2種類の葉が出てきたのはなぜでしょうか。

質問者:   一般   YS
登録番号5931   登録日:2024-06-21
パールアカシアが大きくなり、春に思い切ってかなり切りました。先日新しい葉が生えているのに気づきました。通常のパールアカシアの丸い葉から、ミモザアカシアの葉が2〜3枚ずつ生えています。このような現象はどうしてなのでしょうか?
YS 様

日本植物生理学会、みんなのひろば、植物Q&Aのコーナーへご質問いただきありがとうございました。ご質問への回答は、植物の葉などの形作りの仕組みやこれらの進化を詳細にご研究されている東京大学大学院理学系研究科 教授 塚谷裕一先生にお願いいたしました。

【塚谷先生の回答】
ご質問ありがとうございます。
 パールアカシアを含めてマメ科アカシア属の植物は、ちょっと変わった葉を作ります。仮葉枝と言われるタイプの葉で、アカシア属のそれは、葉柄(葉の根元にある軸です)を左右から押しつぶして平らに広げたような形につくられています。この変わった仕組みのため、上から見たときに平たい普通の葉と違って、枝を横から見たときに平たいという特徴があります。そのおかげでユニークな印象が生まれるのですね。同じようなしくみの葉は、パルプの原料として熱帯で大量生産されているアカシア・マンギウムなどでも知られています。
 さてこの仮葉枝ですが、種を蒔いて出た芽が最初から作るわけではありません。最初はいかにもマメ科らしい、小さい葉がたくさん並んだ複葉をつくります。同じマメ科の、ネムノキとかオジギソウのような形の葉ですね。これが、彼らにとって本当の形の葉なのです。ところがパールアカシアやアカシア・マンギウムなどは、数枚こういう葉を作って株が成熟に向かうと、葉本体の基部にある葉柄の方を発達させ始めて、その先に作るはずの本来の葉を退化させ始めます。その途中段階で、ちょうど今回、枝切りのあとに出たタイプの葉を作ります。葉柄が平たくて、その先に少し複葉を発達させたような葉です。今回観察されたのはこれです。そしてさらに成熟が進むと葉の本体を作るのをやめ、平たい葉柄だけになるのです。
 このような、植物の成熟度合いで葉の形を変える現象を異形葉性と言います。その背景には、植物がどのくらいの光合成産物(糖などですね)を蓄積したかという情報が使われていて、その結果として、成熟度に応じた形の葉を作る遺伝子がはたらくということが知られています。これは種を蒔いてからの初期段階でも見られますが、枝に用意されていた休眠芽が1から体制を立て直すときの初期段階でも見られます。今回、大きく剪定をなさったということですので、まさにそれがおきたのでしょう。
 異形葉については登録番号1165, 2759でも回答していますので、どうぞそちらもご覧ください。
塚谷 裕一 (東京大学大学院理学系研究科)
JSPP広報委員長
藤田 知道
回答日:2024-07-07
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