一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

チェックリストに保存

葉っぱにはえている毛

質問者:   小学生   さな
登録番号5933   登録日:2024-06-24
虫眼鏡でみるとツツジは葉の全体に毛が生えていました。
サクラの葉の表と裏、アジサイ裏は葉脈にだけ毛が生えているように見えました。
どうして葉脈にだけ毛がはえるんですか?
さなさん

Q&Aコーナーへようこそ。歓迎いたします。虫眼鏡で植物の細かい形態を観察するだけでなく、違った植物で比べてみようという好奇心は素晴らしいです。
植物の体の茎、葉、花、果実など地上部の器官には、細かな体毛が生えていることが多いです。この様な体毛は専門用語で「トライコーム/トリコーム、毛じ(モウジ)」といいます。トライコームについては過去にたくさんの質問が本コーナーに寄せられていますので、ぜひそれを読んでください。トライコームの生える場所、形、働きにもいろいろありますので、これらの質問の回答をよんでいただければ、トライコームについての豊富な知識がえられます。本コーナーで「トライコーム」という言葉で検索すると、関連する質問と回答がでてきます。

 さて、そこで、ご質問の「どうして葉脈にだけ毛がはえるんですか? 」 むつかしい問いです。
Q&Aコーナーでトライコームの働きを読んでいただければ分かることですが、トライコームには植物が生育する周囲の環境の好ましくない影響を防ぐ働きがあるとされています。だからトライコームは若い器官(葉など)や柔らかくて、がんじょうでない器官でめだちます。成葉(大人の葉)ではたくさんあったトライコームが少なくなってしまったりします。成葉ではトライコームはたくさんなくても大丈夫なのでしょう。Q&Aコーナーでブナの葉の例(登録番号5102)が書いてありますので、読んでください。
 さなさんが観察したアジサイはどんなアジサイで、また、若い葉なのか、成葉なのかわかりませんが、私も庭にある2種のアジサイと1種のガクアジサイの若、成葉を採取して、顕微鏡で観てみました。どの葉の裏表の葉脈も短い弱々しいトライコームがありました。葉脈以外のところははっきりわかりませんが、ほんの少しあるようにも見えました。もっと詳しく調べてみないとわかりません。
 庭に植えられているアジサイはほとんどが栽培品種です。どの植物の栽培品種ももともと野生であった原種に人間が手を加えて育てた(育種した)ものです。したがって、栽培品種が作られる間に形や、色や、大きさや、味(果実の場合)など、いろいろな形質が強調されたり、なくなったりしてきます。そこで、アジサイの原種とされているヤマアジサイではどうなっているかと調べてみました。残念ながら実物は入手できなかったので、植物図鑑(*)でしらべてみました。
図鑑によると、「葉の両面に粗毛(あらい毛)があって、特に主脈には短毛がある」と書かれていますので、アジサイはもともと葉全体にトライコームが分布していたが、栽培新種ではそれが現在の様になったのだろう等の思います。仮に間違いなく葉脈だけにしかないとしても、なぜ、葉脈だけに残されたのかはわかりません。

*寺崎日本植物図図鑑 平凡社 1977年
勝見 允行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2024-07-09